「だけど、それじゃ悪い虫が寄り付いて心配じゃねぇか?」
「そうなんだよね……」
ディアッカの言葉にキラは、はぁ〜と、大きな溜息を吐いてぼやく。
「ラクスがボクを見つけてくれた様に、娘もボクみたいな男性を見つけてくれるかが心配で心配で……」
「確かに、そりゃ心配だな……」
ディアッカは笑顔で答えているが、内心は……、
『こいつ…、ラクス嬢と一緒になってから随分と性格変わりやがったな……』
皮肉の言葉が湯水の如く湧いてきている。無論、それを口にすることはないが……
「でも…、今でも悪い虫はちゃんと分かってるから大丈夫とは思うんだけどね……」
「んっ? そりゃ、どういう事だ?」
「この前、アスランが家に来た時なんだけどね……」
キラの口調は重たそうに言っているが、表情は邪悪な笑みを浮かべている。
「アスランが娘を抱きかかえようとした途端、大かんしゃくを起こしちゃってね。でも、これはまだマシな方。
仕事の用事で来たシンに至っては、家に入ってきた瞬間に大声で泣き出したんだよ。もう、あの時は大変だったよ」
『あいつ等…、完全に悪い虫扱いかよ……』
ディアッカは複雑に思いながらも、心の片隅では納得してしまっている。
アスランに関しては説明不要。
シンに至っても、軍での素行の悪さは領事館長をしているディアッカの耳に届くほどのもの。
「本当に出来た娘だ」
そんなディアッカを複雑な心境を他所に、ムウはとても同意的な態度を示す。
「悪い虫は寄り付かない事の越した事はないからな」
「ええ、全くです」
キラも、素直にムウの言葉を聞き入れる。
「アスランに関してはこれから先も、ラクスと母さん。それに娘が大きくなってから四人で色々と言えますけど、シンだけは……。
一体、誰の下で働いていたんですかね!?」
キラは苦虫を噛み潰した様な顔で憎々しくぼやく。
「そりゃ昔、ボクも色々と規則破って迷惑かけましたけど、少なくとも礼儀だけは気をつけていましたよ」
「全くだ。あいつの上官だった奴の顔を拝んで見たいもんだ。でもって、その上官と一緒にぶん殴ってやるよっ!」
ヒートアップするキラとムウに、ディアッカは何も言えない……。
自分も軍時代は素行が悪かった事もあるが、それ以上に二人が真実を知れば……、
『アスランの奴…、確実にオノゴロ沖に浮かぶよな……』
折角、平和になってきているのだ。無駄に平和を壊す事もないだろう……。
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