『俺は……』


ムウはぼんやりと薄暗い天井を眺めていた。


ディアッカと飲んだ後、マリューが迎えに来て酒宴はお開き。


帰宅してすぐにムウは床についた。


ところが、結構な酒を飲んだにも関わらず睡魔は一向に訪れてこない。


それどころか、あの時に考えた事が延々とムウの頭の中を駆け巡り続け、眠る事を許さない。


『俺は本当に……』


頭だけを横に向けると、すぐ隣にはマリューが静かな寝息を立てて眠っている。


ムウはマリューの寝顔に触れようと、そっと手を伸ばそうとするが何故か手は止まってしまう。


『幸せになる資格なんてあるのか……』


ムウは伸ばしかけた手を元の位置に戻し、頭も戻し、何も見えない天井をぼんやりと見つめ、今の生活を顧みる。


今のムウはオーブ軍の准将。


もっとも、昔の様に戦場で戦う訳ではなく、とりわけ主な仕事は復興活動の支援とオーブ国内の治安の維持。


後はごく稀に、他国で発生したブルーコスモスの残党による反乱の鎮圧の為に出撃する程度。


幾多の戦場を潜り抜け【エンデュミオンの鷹】と称されるムウが、カガリから託されたアカツキに乗る。


そんなムウにとって残党の鎮圧など造作もない事。


昔の様に生死の狭間を潜り抜けるような事は戦争が終わってから一度もない。


また私生活も順調そのもの。


キラに先を越される形にはなっているが、ムウもマリューという最愛の女性と共に、日々穏やかに楽しく過ごしている。


だが、どれだけ幸福な時間を過ごそうとも、ムウは片時たりとも忘れる事は…、忘れる事などできなかった。


ネオ・ロアノークとして生きた時代、巡り会った悲しき宿命の元に散った三人の子供達……。



















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