【第3話 《大天使の聖母》】





「キラっ! いきなりどうし…、あっ……!」


 キラの断末魔の叫びの意味…、バルトフェルドは瞬時に理解する。


 封印を解く為には鍵が必要。


 その鍵の一つはバルトフェルドが、もう一つはラクスが持っている。


 しかしながら、ラクスがいる場所はここではなくプラント……。


 故に封印を説く事は出来ない…、非常に簡単な三段論法である……。


「ラ…ク……、ああぁぁぁぁぁっ!」


 この現実はキラを絶望の底に叩き落すには余りあるものだった。


 顔色は白…、まさに死人の様な青白さに染まり、膝から崩れ落ち、地面に突っ伏し、大地を割らんとばかりに叫んだ……。


「キラっ!」


 ミリアリアは崩れるキラに駆け寄ったがキラはただただ泣くばかり…、いや泣いてはいないかった。


 余りある絶望がキラの涙の一滴すら干上がらせてしまい、哭くことさえ出来ずにいた……。


 時より聞こえてくるうわ言も、ミリアリア達には何を言っているか全く分からない。


「ど…、どうすれば……」


 ミリアリアはキラの背中を優しくさすりながらバルトフェルドに助けを求め、


「とりあえず…、家の中に入れて落ち着かせるしかない……」


 バルトフェルドもキラの傍へ寄り、ゆっくりとキラを抱え起こした。


「時間は掛かるが、ダコスタ君に連絡を取って迎えに来てもらうしかないな……」


「そうですね……」


 二人とも憔悴しきった様子でキラを連れて家の中に入ろうとしたその時だった。


 背後からけたたましいスキール音鳴り響き、バタンと何かが閉まる音がした。


 この音に二人は何事かと思い、後ろを振り向くと、


「やっぱり此処だったのね」


 そこにはまだ土煙をあがった状態に霞む車の傍に立つマリュー・ラミアスの姿があった。


 それも私服ではなく作業用のつなぎ服姿で、車に乗ってきたにも関わらず顔はうっすらと汗で濡れている。


 脇目も振らずにキラを探していた事を察するには充分だった。


「キラ君っ!」


 マリューは二人に抱えられているキラを見ると険しい顔つきで駆け寄り、二人から乱暴にキラを取り上げる。


 それでもキラはほぼ無反応…、濁りきった瞳をマリューに向けるだけ……


「キラ君、しっかりしなさいっ!」


「マリューさ…ん……?」


「今すぐ私と一緒に来なさいっ!」


 いつになくきつい口調のマリューであるが、


「ボクはどうすればいいんですか……」


 キラはまるで酸欠状態の金魚の様にパクパクと口を動かし、枯れきった声で意味不明な事を呟く。


「今…、ぱぁっと空が瞬いた……。彗星かな……?」


「ちょっとキラ君っ!」


「ううん違う…、彗星だったら…、もっとばぁっと輝いて……」


 バチンッ!


 乾いた音が響き渡った。


 と同時に、ミリアリアとバルトフェルドの顔から血の色が消えた。


『ラ…ラミアス艦長……、それは……っ!』


 バルトフェルドは生涯味わってきた恐怖とは確実に一線を画す恐怖を覚えた。


 マリューの行為は確信犯で地雷を踏み抜いた…、いや踏み抜いたというよりは地雷原を全力疾走するのと等しい行為。


 その証拠に灰色に濁りきっていたキラの瞳が鮮血の如き赤に染まり始めている。


 バルトフェルドは思った…、カタストロフィー(大厄災)到来だと……


 ところが……、


「一行も早くラクスさんの所へ行きたいのでしょ!」


 マリューが怒鳴るや、今まで覆っていたありとあらゆる負の空気が消えた。


「ラクスの…、ところへ……?」


「そうよ!」


 マリューは両手でがっしりとキラの肩を掴み、聞き分けのない子供に言い聞かせるように厳しく、それでいながら諭すように言葉を投げる。


「ラクスさんに合いたいのでしょ? だったら、素直になって私のいう事を聞きなさい!」


「本当に…、ラクスの所へ……?」


「そんな嘘ついてどうするのよ! それともキラ君は、ラクスさんの所へ行きたくないのっ!」


「そ…、そんな訳ないじゃないですかぁぁぁぁ!」


 キラは吼えた。


 だが、先程までの禍々しさも黒々しさなど微塵もない。


 いつの間にか戻った瞳の輝きをマリューへと向け、純真なる思いでの叫び。


 キラは正気を取り戻した。


「マリューさん、お願いします! ボクは…、ボクは一刻も早くラクスの元へ!」


「ええ」


 マリューはほっとした表情を浮かべ、キラの肩から手を離し、


「とにかく今は急ぎましょう。もうすぐ準備が終わるわ」


「準備?」


「詳しい説明は後よ。さあ、行きましょ」


 その手を今度は、子供が迷子にならない様にしっかりと優しく握り締めた。


「あの〜…、申し訳ないのですが……」


 そんなキラとマリューの間に、ミリアリアが申し訳なさそうに入ってきた。


「実はキラのお母さんに『見つけたら連れて帰ってきて』って頼まれたのですが…、どうも無理っぽいですね……?」


「分かったわ」


 マリューはミリアリアの意図を汲み取り、にっこり微笑む。


「私の方から連絡しておくわ。あっ、そうね。ミリアリアさんも一緒にきてくれないかしら?」


「あ、あたしもですか?」


「ええ。手伝ってもらいたい事があるかもしれないから」


「はい。分かりました」


 ミリアリアは同意するとマリューの横に並び、くるりとバルトフェルドの方を向いた。


「バルトフェルドさん、またご馳走になりに来ますね」


「あっ、ああ、気をつけて……」


「バルトフェルドさん。色々とご迷惑をかけて済みませんでした」


「ま…、まあ、気にするな……」


「バルトフェルド隊長。ご迷惑ついでですが、また連絡いたします」


「了解した」


「じゃあ、行くわよ」


 おのおのがバルトフェルドに礼を告げると、三人はマリューが乗ってきた車に乗り込み車を走らせた。


 何故かオーブ官邸ではなく、モルゲンゲーテがある方向へ。


『やっと終わったか……』


 大嵐が去り、ようやく昼下がりの静けさが戻った自宅前でバルトフェルドは空を見上げた。


『ラミアス艦長が来なければ……』


 マリューが来る直前まで状況は最悪を極めていた。


 いや、マリューがキラを打った時、大袈裟でなくバルトフェルドは死を覚悟した。


 キラと矛を交えた事がある彼だからこそ分かる…、凶戦士と化したキラの後には屍しか残らない事を……。


 しかしマリューはキラを咎めた。


 大人しくさせた。


 ちゃんと、言って聞かせた。


 バルトフェルドが知り限り、あの状態のキラを抑えられるのはラクスだけと思っていた為、あのマリューは……


『まさしく【大天使の聖母】だな……』


 そんな感傷に浸りながらバルトフェルドは家の中へと戻る。


 連絡が来るまでに相応の段取りを…、速やかに次の一手を打つ準備の為に……。


























次回【Never End】第4話



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《小話C》
今回はマリューさんが登場です!
ってか、ここでマリューさん登場させなかったら、話が収拾付きませんでした!(作成実話です)



夜流田さんは、キラにとってマリューさんは頭の上がらないお姉さんと思っています。
もとい、原作を見てもキラは良い保護者に恵まれてますね。
マリューさんにしても、ラクスにしても、カリダさんにしても、そんな保護者に恵まれているからキラは素直なんですよね。
オレが書くキラは全く異なるけどね、HAHAHAっ♪(開き直りw)



お分かりと思いますが、キラのうわ言は思いっきりパクリですw
崩壊といえばやっぱし、あいつでしょ♪(ガンダムシリーズ初代キレキャラ、と夜流田さんは思ってますw)
《原作は別のうわ言なんですが、これまた別方面からのパクリですwww》



ちなみに、まだラクスは登場しません。
ラクスを待っている皆様、今しばらくお待ちを!!!







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