「……ラ、キラ……」
誰かがボクの事を呼んでいる。
甘く、柔らかな声で呼んでいる。
「……あっ」
キラは閉じていた目を開け、声がした方向に目をやった。
「ラクス……」
「おはようございます、キラ」
ラクスはにっこり微笑んだ。
「こんな所で寝ていました、風邪をひきますわ」
「大丈夫だよ」
キラは自分の座っている場所をポンと叩いた。
ここは縁側。
キラのお気に入りの場所だ。
「ここにいると、気持ちいいいんだ」
キラは寝ぼけた目を、眠る直前まで見ていた場所に向けた。
そこは綺麗に整えられた庭。
子供達が無邪気に走り回り、穏やかな日差しと風が包み込んでいる。
「そうですわね」
ラクスはすっとキラの隣に腰を下ろした。
「本当、気持ちいですわね」
「うん。部屋で休んでいるよりずっと休まるよ」
キラは小さくあくびをし、目をこすった。
「でも、やっぱり眠い……」
「それはそうですわ」
ラクスは少し心配そうに訊ねた。
「結局、朝までかかったのですか?」
「うん……。終わったら太陽が出てた……」
キラは頭をふらつかせながら、辛そうに続けた。
「カガリの頼み…、だからね……」
「そう…、ですわね……」
ラクスは溜息を吐くように呟いた。
昨日、突然カガリが訪れ、キラに仕事を頼んできたのだ。
内容は災害活動専用のMSのデータ解析とナチュラル用のOS作成。
モルゲンゲーテだけでは作業が追いつかず、キラに白羽の矢が立った。
「アスランは何をしているのですかね」
ラクスは不満げに呟いた。
「ちゃんと仕事、していらっしゃるのかしら?」
「仕方ないよ、ラクス」
キラは苦笑いを浮かべ、ラクスを諌めた。
「アスランだって色々と忙しいんだから」
「それは…、そうですが……」
「それに、こういう時にしか出来ない事だってあるし♪」
キラはそう言うと、ラクスの身体にもたれかかった。
「肩…、貸してね……」
キラは微かに呟くと、目を閉じようとした。
どうやら、睡魔がキラを完全に支配しているようだ。
「あらあら? それでしたら肩よりも……」
ラクスはゆっくりキラの身体を起こし、自分の姿勢をただした。
そして、キラの頭をそっと自分の膝の上に置いた。
「こちらの方が、ゆっくり出来ますわ」
「いいの……?」
「ええ。ごゆっくりお休みなさいな」
ラクスはそっとキラの頭を撫でながら、優しく囁いた。
「じゃあ、遠慮なく……」
キラは全身の力を抜き、全てをラクスに委ねた。
『最高だな……』
ラクスの柔らかな足の感触がとても気持ちいい。
見上げれば、すぐ傍にラクスの笑顔がある。
そして、耳を澄ませれば……
『なんて綺麗な歌なんだろ……』
穏やかな風に乗ってラクスの歌が聞こえてくる。
本当に…、本当に綺麗な歌だ……
ラクスの歌を…、こうやって聴けるのはボクだけなんだ……
ボクだけの為に歌ってくれているんだ……
『ラクス……』
キラは身体を横にし、そっと、しっかりと両腕でラクスの膝を抱え込んだ。
「あらあら、キラったら」
ラクスはキラの動作に少しだけ驚いたが、そっと両手でキラの頭を包み込み、
「本当、甘えん坊ですわね♪」
愛しく頭を撫で、天使の旋べを奏でた。
「うん。甘えん坊だよ」
キラはしっかりとラクスの歌を、ラクスの温もりを噛み締めた。
「ボクだけのラクス…、ボクの全て……」
「わたくしも、ですわ。キラ……」
「えっ? キラは用事で出られない?」
「そうなのよ」
家を訪れたカガリに、カリダは申し訳なく告げた。
「ごめんね、カガリさん」
「そうか…、それは残念だ……」
カガリは本当に残念そうに呟いた。
「せっかく、夕食をご馳走しようと思ってたのに……」
「それよりもこれ。キラから預かっているわ」
カリダは数枚のフロッピーディスクをカガリに手渡した。
「キラにはちゃんと伝えておくわ」
「すみません、叔母さま……」
カガリは目的の物を受け取ると、深々と頭を下げ帰っていった。
『本当ごめんね、カガリさん』
カリダはカガリが帰った事を確認すると、縁側へと向かった。
カリダは遠巻きに縁側を見つめながら、自分の事のように微笑んだ。
『こんな所を見ちゃったら…、ね……』
縁側で夕日に照らされる息子と息子の恋人の姿。
恋人の膝を枕にし、幸せそうに息子が眠っている。
おそらく、恋人も眠っているだろう。
『それにしても……』
カリダはくすっと笑った。
『キラって、まるで子猫みたい♪』
カリダは飽きることなく、その光景を見続けてた。
夕日が沈むその時まで、ずっと……
《あとがき》
元ネタは【Crystal Pearl】様の管理人である砂城 叶さまのHPにありますイラストです。
もう、どう言えばいいのでしょうか? あのイラストを見た瞬間……
激しく萌えました!!!
とにかく、幸せな寝顔のキラがたまりません!
愛しそうにキラの頭を撫でるラクスがたまりません!
《ってか、むしろ私がラクスの膝で眠りた…(以降省略)》
ご覧になっていない方は、是非とも見てください!
あのイラストを見た瞬間、「うわ〜、キララク膝枕の話書きてぇ!」と本気で思いました。
キララクチャットの時にダメ元で砂城さまにその事を申しますと、了承してくださいました。
本当にありがとうございます!
《ちゃんと書けたか、ちょっとドキドキですが…(汗)》
舞台は戦後。まだ2人は入籍しておりません(笑)
ちゃっかりカリダさんを出しているあたり、やっぱ私の書いた話なんだな〜とw
これからも、機会がございましたら書いていきたいと思います。
《砂城さま、本当に本当にありがとうございます!》
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