「わかりましたわ。では、また明日……」


受話器を置き、軽く息をつきました。


電話の相手はアスラン。


用件はカガリさんとののデートについての相談、それと服装のコーディネイトの依頼でした。


『本当、アスランは……』


アスランは婚約者時代からそうです。


とにかく女性の気持ちに疎く、自身にも疎い。


【朴念仁】という言葉は、まさにアスランの為にある言葉です……


『他にも相談できる人はいるでしょう……?』


少し重くなった身体をゆっくりと返しました。


すると、そこには……


「電話の相手、誰?」


キラが静かに立ち、呟くように聞いてきました。


ところが、キラの顔は明らかに不快感で一杯です。


「誰なの、電話の相手……?」


「アスランですわ」


「アスラン……っ」


途端、キラの瞳がぎらりと光りました。


「何でアスランがラクスに電話するの?」


「そこまでは……。ですが、わたくしにしか頼めない相談と申していましたわ」


「なに…、それ……?」


キラはわたくしに聞こえるようにあからさまな態度で舌を打ちました。


「っで、ラクスはどうする気なの?」


「どうするって……。勿論、相談には乗りますわ」


「どうして……?」


「どうしてって? それは、アスランは……」


「婚約者だったもんね……」


キラはそう吐き捨て、くるりと背を向けました。


『なんですか…、その態度はっ!?』


あまりに素っ気ない…


いえ、冷たく見下したキラの態度にわたくしは怒りを覚えました。


「キラ。一体、何が気に入らないのですか?」


出来る限り穏やかに言ったつもりでした。


それでも、言葉の端々に棘が帯びてしまいました。


「何が気に入らない…、って……?」


キラは足を止めました。


それでも振り返ろうとはせず、わたくし以上に刺々しく言い捨てました。


「本当、鈍感だね。ラクスは……」


「キラッ!!」


「ボクの事なんてさっぱり忘れて、楽しんできたら……っ!」


キラは激しく肩を震わせ、その場から去っていきました。


『ええ! 存分に楽しんできますわ!』


そう、思いきり怒鳴ってやろうと思いました。


ですが怒鳴った所で、うやむやが晴れる訳ではありません。


代えって疲れてしまうだけです。


『本当……、頭に来ますわ!』


先ほどまでキラが立っていた場所をぎっと睨みました。


っと、その時でした。


「ラクス、ラクス」


背後からわたくしを呼ぶ声が聞こえました。


当然、キラではありません。


失礼のない様にこわばった表情を無理に和らげ、


「はい。カリダさん」


ゆっくり振り返り、にこやかな表情を作りました。


ですが、カリダさんはわたくしとは対照的に、


「無理…、しなくていいわ……」


複雑な表情で、不安な顔でわたくしの傍にやって来ました。


「ごめんね。キラがまた迷惑かけちゃって……」


「いえ、気にしていませんわ」


努めて冷静に答えましたが、


「嘘おっしゃい……」


カリダさんは大きく肩を落とし、じっとわたくしを見つめました。


「そういう所、あなた達の悪い所だわ」


「えっ……?」


『何をおっしゃりたい…、のでしょうか……?』


皆目見当がつきません。


きっと、それが顔に出てしまったのでしょう。


「確かにあなた達は互いに分かり合っているわ。それは、とても素晴らしい事だわ。でもね……」


カリダさんは苦笑いを浮かべ、すっとわたくしの胸を指差しました。


「たまには思いを形にしないとダメよ」


「それは…、どういう事ですか……」


「キラ、やきもち焼いてるのよ」


「えっ!?」


思いがけないカリダさんの言葉に、上ずった声を上げてしまいました。


「キラが!? やきもち??」


「そうよ」


カリダさんは何故か楽しげなに答えました。


「きっと楽しそうに話しているように見えたのよ。しかも、相手がアスラン君だからなおさらだったのよ」


「で、ですが…、相手はアスラン……」


「まだ自分に自信が持ててないのよ、あの子は……」


カリダさんは穏やかな眼差しをキラの部屋がある方向に向けました。


「だからキラがやきもち焼いている事実、私は嬉しいわ。あの子が、あんなに感情的になるの見た事なかったから……」


「カリダさん……」


「まあ、それでもね……♪」


不意にカリダさんの表情が大きく変わりました。


ですが、わたくしの様に怒気が出た顔ではなく……


語弊がありますが、とても不気味に微笑んでいます……


「ちょっと、お灸を据えないといけないようね」


ゾクッと、悪寒が走りました。


ですが自重の言葉も進言も出来ません……


カリダさんの重圧感(プレッシャー)の凄まじさに……


「ちょっと待っててね。すぐに引きずり出してくるから♪」


「あっ…、カリダさ……」


「いいのいいの。あの子の場合、ガツンと言ってやらないと分からないから♪」


カリダさんはそう仰ると、キラの部屋へと向かいました。


その足取りは、明らかに楽しんでいる様でした……


『凄い人…、ですわ……』


心から思いました。


あの人だからこそ、キラが純真に育ったのですね。


あんな素晴らしいお母様は、いません。


『ですが……』


それでも、やっぱり思ってしまいます。


『カリダさんには、とても勝てそうにありませんわ……』














数分後……


キラの部屋からカリダさんの怒鳴り声が聞こえ、


キラはカリダさんに引きずられ、わたくしの前に立たせました。


そして……








「ごめんなさい……」








っと、今にも泣きそうな顔でわたくしに謝りました♪




















《あとがき》
22222HIT達成者「ひー」様のリクエスト小説です。
ちなみにお題目は、
【指定カップリング:キララク(できれば黒キラ希望)】

指定カップリングは至極当然なので何の抵抗もなかったです。《キララク中心ですからね》
ですが黒キラ、というので非常に悩みました……(汗)
と言うのは管理人の脳みそでは……、『黒キラ=攻キラ=R18し…(げほんごほん)』

何とか黒キラにしてみたのですが、最後はカリダお母さんが……
いや〜、母は強し! ですな〜〜(ごまかすでない)
リクエスト内容とはちょっとズレが生じてしまいましたが、いかがだったでしょうか?
《問答無用でツッコんでやってください》
まだまだ勉強不足ではありますが、以後もよろしくお願いします。

久々にカリダお母さん書けて、かなり満足です(笑)
もっと、カリダお母さんがキラをいじり倒す話、考えよう〜と♪




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