あの戦争から1年……


わたくしは、とりとめのない日々を過ごしています。


本当にとりとめのない、穏やかで平和の日々を過ごしています。


あの戦争でわたくしが手に入れた希望……


キラ・ヤマトと共に……

















夕暮れの砂浜。


わたくしの横を歩くキラが、ふと足を止めました。


「ねえ、ラクス?」


「はい。どうかいたしましたか?」


「少し…、変な事を聞いていい……?」


キラはそう言いながらも、じっとわたくしを見つめました。


その目は、明らかに不安と動揺に支配されています。


ですが、わたくしは何も言わず、キラの言葉を待ちました。


何度か、細波が浜辺に打ち上げられた後、キラは言いました。


「ラクスは…、何を考えているの……?」


「………、はい?」


「時々、思うんだ。ボク……」


キラはそう仰ると、静かに砂浜に腰を下ろし、遠く水平線へと目を向けました。


「ラクスがボクの傍にいてくれることは本当に嬉しい。こんなボクの事を愛してくれている事も嬉しい。でも……」


「でも……、なんですの?」


わたくしもそっとキラの横に座りました。


ですがキラは水平線を見つめたまま、言いました。


「ラクスは…、今の生活に満足しているの……?」


キラはそっと手で砂をすくい、静かに零しました。


それは考えてではなく、無意識に……


さらさらさら…


さらさらさら……


すくっては零し、すくっては零し……


まるでキラの心の脆さをわたくしに伝えようとするように……


「ええ。満足していますわ」


わたくしは答えました。


ですが、キラはわたくしを見てくれません。


『嘘、言わないで……』そう答えるように……


「嘘ではございませんわ」


わたくしは反論するように、そっと砂を零すキラの手を握りました。


「先ほど、「君は何を考えているの?」と仰いましたね?」


「う、うん……」


「わたくしは、あなたの事を考えていますわ」


「う…、そ……」


「ですから、嘘ではございませんわ」


わたくしはキラの肩に寄りかかりました。


「明日のキラ、明後日のキラ、一週間後のキラ、一年後のキラ……。そんなキラと一緒にいるわたくし。その事ばかり考えていますわ」


「将来のボクの事……?」


「それは、まるで旅をしているようですわ」


「旅……?」


「はい。旅ですわ……」


わたくしはゆっくりとキラの首に両腕を回し、振り向かせました。


「キラを好きになる…、そんな旅ですわ……」


「えっ…? ええっっ!?」


途端にキラの顔は夕焼け色に染まりました。


「ボクを好きになる旅って???」


「今日よりも明日、明日よりも明後日……。もっともっとキラを好きなっていく。そういう旅をしているのです……」


「で…も……、ボ…、クは……」


きっと照れているのでしょう。


唇は微かに震えていますが、言葉が出てきません。


キラらしいと言えば、キラらしいです。


ですが、わたくしは……


「えっ……? んっんん!?」


わたくしはキラの唇を塞ぎました。


わたくしの唇で塞ぎました。


キラは驚いた顔で抵抗しようとします。


ですが、わたくしは決して離れません!











キラとの時間…、何物にも代えられない二人だけの時間


言葉をもてあます沈黙なんてイヤ……


同じ沈黙ならば、こうして共にしたい……


水の底を歩くように……


互いの温もりを感じあいながら渡りたい……











キラと共に歩く時の旅……











今がわたくしの全て……
















《あとがき》
オールキャラも好きですが、やっぱり私の原点はキララク
久々のキララク、もといラクキラです(笑)

舞台は種終戦後、まだキラが不安定だと思われる時期です。
種Dではキラが信じられないくらいのタラシっぷりでしたが(笑)
そうなったのは、やっぱりラクスが押していたからだと思います。

ちなみにタイトルの【好きになる】は、チャゲアスの曲にもあります。
この曲のフレーズに「好きなる、そんな旅を始めた」とあります。

キラもラクスも互いを好きになっていく。
そして、それは永遠に終わらない旅だと…
そんな所をモチーフに話を考えました。

キララク(ラクキラ)は、やっぱりええなぁ〜♪
やっぱり、これがオレの原点だな〜♪




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