キラは布団に包まりながら心底思っていた。


『どうして、こんな事になったんだろう……』


いつもは右肩を下にして眠るのだが、今宵はそれが出来ない。


というのは……?


『ああ、ラクス……』


キラは横目で自分の横を見た。


そこには、まるで物語の姫君のように眠るラクスの姿がある。


普段、ラクスとボクは別室で寝起きをしている。


今宵がおかしいのだ。


『いくら新年だからって……』


事の発端はこうだ。


今日は、いや昨日といった方が正しいだろう。


ラクスが「今日は初夢ですわ。ですから、皆様と一緒に寝ましょう」と言ったのだ。


結果、全員が大広間に布団を広げての御就寝。


無論、その結果でこの配置ならボクは心から神に感謝する。


けれど、問題はボクの左隣で眠っている人物だ。


『どうして、よりによって母さんなんだよ……』


そうなのだ。


ボクの隣に母さんが眠っているのだ。


『母さん、恨むよ……』


こんなボクだけど、ボクだって男だ。


好きな人の…、ラクスと寄り添って寝たいよ!


でも、もしもその光景を母さんに見られたら何を言われるか?


いや、言われるならまだその方がいい。


母さんの事だ。絶対に何も言わず、高みの見物を決めこむ。


そして、ボクが右往左往する姿を楽しむ。間違いない!


『でも、寝顔を見るくらいなら……』


ああ、なんて自分の願望に素直なんだろう……


ボクは右肩を下にしようとしたその時だった。


眠っているはずのラクスの目がパチリと開いた。


『えっ!?』


一瞬、頭の中が真っ白になり、慌てて逆方向を向けようとした。


「キラ」


ラクスはそんなボクに、ボクだけに聞こえる声で話しかけてきた。


「今日は申し訳ございませんでした」


「な、なにが?」


まだパニック状態から抜けだせず、上ずった声で返事をしてしまった。


だけど、ラクスは静かに話を続けた。


「みんなと眠る事、ですわ。キラはご迷惑ではなかったですか?」


「そ、そんな事ないよ」


「夢でしたの……」


その時、ラクスの指がボクの指に絡んだ。


「えっ……?」


「こうして、枕を並べて眠ることが……」


ラクスの顔はどこか寂しげだった。


「片親でしたから、こうやって眠る機会がありませんでしたわ。それに物心ついた時には、もう独りで寝起きをしていましたし……」


そうだった……


ラクスには母親がいない。


父親のシーゲルさんも、あの戦争で亡くなった……


「そんな顔、なさらないでください」


絡まる指に力が少しだけ込められた。


まるで祈るかのように、しっかりと……


「わたくしは今、本当に幸せです。子供達がいて、カリダさんがいて、そして……」


ラクスはボクのほうを向き、にっこりと微笑んだ。


「キラがいます」


「ボクも幸せだよ」


ボクも顔をラクスのほうへと向けた。


「今年も…、これからずっと幸せでいようね……」


「はい♪」










《あとがき》
1月は《初夢》キラとラクスの夜です。
攻めようとするが攻めきれないキラたん、書いてて楽しかったです(笑)
ラクスにとってキラは恋人であり、大切な家族と思います。
そんな2人を上手く書けていけたら、と思います。

ちなみに、この配置。提案者はカリダさんです。
でもってカリダさん、たぬき寝入りしてます(笑)
翌朝、カリダさんは息子をどう思っているのでしょうかね〜〜〜



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