カリダは独り炬燵(こたつ)に入って、ぼんやりしている。
テレビはついていない。
ラジオもついていない。
ぼんやりとゆっくり過ぎてゆく時の流れに身を委ねている。
「今年もいろいろあったわ……」
カリダはぽつりと呟きながら、たおやかな笑みを浮かべた。
頭に思い浮かんだのは息子と息子の恋人。
鈍感な息子の世話を焼くのが楽しい。
しっかり者の恋人と息子のやり取りが楽しい。
あの二人を見ていると本当に幸せな気持ちになれる。
幸せである……
「あらあら、カリダさん?」
カリダの後ろからおっとりした声が聞こえた。
「遅かったわね、ラクス」
しっかり者の息子の恋人――ラクスにカリダは優しく返す。
「はい。子供たち、なかなか寝付いてくれなくて」
ラクスも優しい笑顔を浮かべながら炬燵に入った。
「ですが仕方ありませんわ。今年も今日で終わりですから」
「そうね」
「今年も色々とありましたわ……」
「そうね……」
カリダとラクスは互いに見つめあった。
カリダとラクス、共に生活を始めて1年あまり。
カリダにとってラクスは息子の恋人である以上に実の娘のような存在……
ラクスにとってカリダは恋人の母である以上に実の母親の様……
そして互いに口には出していないが、互いに思っている。
『自分と本当に似ている♪』と……
「そういえば……」
不意にラクスが訊ねた。
「キラは何をなさっているのですか?」
「キラは今、キッチンよ」
「キッチン? どうしてですの?」
「あらあら? そうだったわね」
カリダは柔らかな笑みを浮かべ返す。
「ラクスは年越し蕎麦、知らなかったわね?」
「年越し…蕎麦……?」
「年越し蕎麦は《家運を伸ばし、寿命を延ばし、身代を永続きさせたい》って願いが込められているのよ」
「そうなのですか?」
「ええ。蕎麦は細く長くのびる事からそういう風に伝わっているのよ」
「縁起物…、みたいな物なのですね?」
「そうね、縁起物といえばそうなるわね」
「ですが……?」
ラクスは首をかしげた。
「それとキラがキッチンに居るのと、どういった関係が?」
「あらあらまあまあ♪」
カリダは悪戯っぽく笑った。
「ラクスに食べさせたいからに決まってるじゃない♪」
「えっ……!?」
「って、言うのは冗談で♪」
「あらっ♪」
「大晦日の日ぐらい、楽してもいいじゃない♪」
「それもそうですわね♪」
ラクスとカリダはくすくすと笑った。
その時、キッチンから、
「母さ〜ん、ラク〜ス。出来たよ〜〜」
両手にお盆を持ったキラが満面の笑顔を浮かべてやって来た。
「さあさあ、冷めないうちに食べようよ♪」
キラは丁寧にどんぶり鉢を二人の前に置き、最後に自分が座る所のどんぶりを置き炬燵に入った。
「ちょっと薄味かもしれないけど、味には自信があるよ♪」
「それは楽しみだわ」
「それは楽しみですわ」
カリダとラクスはキラの言われるまま箸を手に取った。
ずるずるずる
ずるずるずるずるずる
部屋に響く蕎麦を啜る音。
そんな音を聞きながらキラとラクスは思う。
『ラクス、美味しそうに食べてくれてる♪』
『本当、美味しいですわ。キラ♪』
そして、カリダも思う。
『ありがとうね。キラ…、ラクス……』
仲睦まじい二人……
幸せ一杯の二人……
きっと、この蕎麦の様に長く温かく続いていくのだろう……
これからも見続けられる……
何気なくも幸福に満ち溢れた日々が……
ずっと……
ずっと……
《あとがき》
まずは11月の更新がなくてすみません!(土下座)
体調崩したり、色々とありまして書くの忘れてました……
12月、今年もいよいよ終わりです。
そういう事で3人仲良く年越し蕎麦を啜らせました♪
キララクもそうですが、カリダさんにとっては今年は最良の一年だった事でしょう(笑)
ってか、オレの書くカリダさん、色々やったよな〜。
散々キラを弄り倒したり、ラクスと楽しく嫁姑やったり、アスラン威嚇したり(これは違うか♪)
すっかり管理人のキラは家事が板についてきました(笑)
まあ、これからの男は家事ぐらいは出来なきゃダメでしょ!
オレも散々こき使われているしなぁ…(遠い目)
これで2005年のSEED小説の更新は終わりです。
この時期はコミケカタログチェックとか、有馬記念予想とかで忙しくて…(えっ)
2006年はどういった年になるのでしょうか?
年明けにHP運営の声明文出します。
皆様、どうか良いお年をお迎えください。
今年一年、本当に本当にありがとうございました!(ペコリ)
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