夕焼けに染まる砂浜。
今、わたくしはキラと一緒に歩いています。
散歩…、と言われればそうでしょう。
ですが、散歩に誘ったのはわたくし。
無論、散歩と言うのは建て前……
今、欲しいのは二人きりの時間以上のもの……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ラクスと二人きりで散歩。
誰もいない砂浜をゆっくりと、静かに、手を取り合って……
「幸せ」以外の言葉が見つからない。
でも、今日のラクスはどこか様子が違う。
なんて言えばいいのだろう?
何かを待っている、と言えばいいのか……
だけど、何を待っているんだろう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
予想通り、と言いましょうか……
キラは時々目をあわせてはくれますが、それ以上はしてきません。
キラが積極的ではない事は分かっています。
それでも誰もいない夕暮れの砂浜。
わたくし達を見ているのは夕焼けと一番星ぐらいなものです。
『やっぱり、わたくしが……』
そう思い、わたくしは足を止めました。
「キラ、少し休みませんか?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うん……」
ボクが答えると、ラクスは静かに腰を下ろした。
でも、ボクはすぐに座らなかった。
『綺麗だ……』
ボクのすぐ足元に座る最愛の女性(ひと)
夕焼けの色と合わさった桜色の髪が潮風になびき、甘い香りがボクの鼻に届く。
それと、ちらちらと見えるまろやかな首もとの曲線。
とても綺麗に整っていて、とても艶めかしい……
『誰もいないんだ…、けど……』
このままぎゅっと抱きしめたい。
いや、そのまま押し倒してしまいたい!
でも、そんな事をしたら……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『まだ来てくれません…、が……』
ゆっくりとキラを見上げました。
顔こそ平静を装っていますが、雰囲気はとてもそわそわしています。
『もう少し…、でしょうか?』
わたくしは、そっと言葉を風に乗せました。
「キラもお座りになりまして?」
「う…、うん……」
キラは言われるまま、わたくしの隣に座りました。
ですが、そわそわとした態度はそのまま……
『さて、どういたしましょうか……』
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『ど…、どうしよう……』
間違いない。
ラクスは誘っている……
でも、どうすればいいんだ!?
本能は「押し倒せ!」としきりに叫んでいる。
だけど理性は…
理性は……
『ここで行かなきゃ、男じゃない…、よね……っ!』
理性もGOサインを出した!
それでも、一気に押し倒したら絶対に嫌われる。
そう…、紳士的にだ……
ムードを大切に、ラクスが喜ぶように……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
太陽が地平線に沈みかけた頃、ようやくキラに変化が見えました。
何度も何度も大きく深呼吸して、何度も何度もわたくしを盗み見て……
そして、辺りが暗くなり始めた頃に……
「ラ…クス……」
キラは小さな声で囁くと、そっとわたくしの腰に手を回しました。
『待たせすぎですわ』
そう心の中で呟き、そっとキラに身体を預けました。
すると、キラはぎこちない動きでわたくしを正面に向けさせました。
「キス…、しても…いい……?」
キラの顔は真っ赤に染まっています。
夕日は既に沈んでいるというのに。
『あらあら♪』
本当に可愛いですわ、キラ。
ですが、何故かとても格好が良く見えるのが不思議です。
『でしたら、わたくしも……』
わたくしは少しだけ目をそらし、ほんの少しだけ頷きました。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
な…、なんて可愛いんだろう……
もう…、我慢できないよ……
「ラクス……」
そっとラクスを抱きしめ、意思表示した。
ラクスは天使のような微笑みを浮かべ、そっと目を閉じた。
『好きだよ、ラクス……』
ボクは高鳴る鼓動を感じながら、そっと唇を重ねた……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
重ねなれた唇かな伝わるキラの温もり……
わたくしを愛する、わたくしが愛する人の温もり……
『好きですわキラ。ですが……』
不埒ですが、わたくしは声に出さずに言いました。
『もう少し、自分に自信を持ってくださいな♪』
わたくしが愛するのは、キラ……
あなただけなのですから……
《あとがき》
8月という事で夏らしく浜辺を舞台にイチャこかせました(笑)
しかし、書きながらずっと思ったのが……
「作中の2人からは、絶対にありえねぇ話だな……」でした(汗)
作中だったら、絶対にラクスがキラを押し倒すでしょうから(えっ)
でも今回は【誘い受け】という事で……(おい)
ちなみにタイトルの【海岸物語】
元ネタはサザンオールスターズの【チャコの海岸物語】
仕事中、車を運転していた時にラジオから流れた時にこのネタを思いつきました(笑)
さて次は9月
9月はあまり行事がないからな……
ですので、9月はリクエストを受け付けます。
9月らしい行事を明記の上でリクエストください。
WEB拍手、メール両方で受け付けています。
〆切は9月15日前後ですので〜〜〜
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