身体にまとわりつく湿気。


天井から、窓ガラスから、外から聞こえてくる雨音。


どんよりと澱みきった空。


部屋を見渡せば、部屋の壁を隠すかのように出来上がった洗濯物のカーテン。


梅雨の到来である……


『この時期だけは、どうしても好きにはなれませんわ……』


ラクスは読んでいた本を置き、大きく溜息を吐く。


それでもラクスは、今までに比べれば今年は幾分楽な気分でこの時期を迎えることが出来た。


『ですが、こういう時ですからこそ……』


ラクスは置いた本を手に取り、再び読み始めた。


どうしてラクスが本を読んでいるのか?


その答えは、彼女のすぐ正面にある。


『少しは気晴らしになっているかな?』


ラクスの正面に座るキラは、読書にふける彼女を眺めながら自身も本を読んでいる。


のではなく……


『やっぱり可愛いな……♪』


キラは本を読むふりをしながら、時々僅かに変わるラクスの表情を見ているのだ。


料理の本を読んでいる時は、熱心な表情に。


文学小説を読んでいる時は、感慨深そうな表情に。


専門雑誌を読んでいる時は、興味深そうな表情に。


少女向け小説を読んでいる時は、笑ったり怒ったり、悲しんだり、喜んだり……。


まるで万華鏡の様に、ラクスの表情が変わる。


そんな彼女の表情を、キラはじっくり読んでいる。


『本当…、本当可愛いよ……♪』

















「あらあらまあまあ」


お互い向き合うようにしながら読書に勤しむ息子と娘を見ながら、カリダはのほほんと微笑む。


『キラの読書は、本当に楽しそうね……♪』


カリダは知っている。


どうしてキラがラクスに読書を勧めたのかを?


表向きは、毎年この時期になると気を滅入らせる彼女への気晴らしになっている。


だが、云うまでもなくキラの本当の狙いはそれとは別。


現に今、カリダの前でキラの目論見どおりの状況になっている。


しかし、カリダはラクスにキラの真意を伝えようとはしない。


何故なら……












「キラは、万年思春期ね♪」


こんな息子と、娘の不器用なやりとりを見ているのが大好きだからだ。






















《あとがき》
6月は梅雨…。この時期になると膝が痛む夜流田さんです…(お前、一体何歳だ?)

一昨年・去年の月間キララクをご覧になっている方はお気づきでしょうが、ラクスは梅雨が嫌いな設定になってます。
洗濯物は乾かないし、買い物に行くのも億劫な季節ですからねぇ〜♪

タイトルの【晴耕雨読】の通り、雨降っている日は読書。というのが基本趣旨になってます。
まあ、キラたんの趣旨は違って…、いやある意味では正解だなw
本読んでいる時って、存外表情が変わるものだと思います。
なのでキラたんは、存分にラクスを読んでいますw

でも一番楽しいのは、やっぱりカリダさんのポディションじゃないですかね♪
息子と娘の微笑ましい光景を独占しているわけですからw





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