『本当…、どうして……っ!』
ラクスは憎々しく灰色に染まった空を睨みつける。
今日は久しぶりにキラと街でデート。
出かけしなの天気予報は快晴。故に、雨の備えをなど一切持たずに家を出た。
ところが街に到着した途端、突然の大雨……
空からは大粒の雨が容赦なくラクス達に降り注ぎ、どうしようもないほどまでに服を濡らす。
キラに買ってもらった新しい靴は、すっかり汚れてしまっている。
いや、それ以上にこの天気のお陰で折角のデートは台無し……
『冗談ではありませんわっ!!』
ラクスの不機嫌度は、完全にレッドゾーン……
ところが、キラはまるで悟りを開いたかのように穏やかな表情で、不機嫌なラクスを窘める。
ラクスと同じ、自分をすっかりずぶ濡れなのに?
「仕方ないよ。天気は予約できないから」
「ですが、キラっ!?」
「そんな顔、しないでよ……。台無しだよ……?」
「台無しなのは、今日のデートで……、きゃっ!?」
文句を言おうとするラクスの言葉が止められる。
突然、手を握られ、抱き寄せられた為に……
「そんなに怒ってばっかりじゃ、この後が台無しになっちゃうよ」
キラはラクスをしっかり抱き寄せ、にっこりと微笑む。
しかし、ラクスには何の事か全く分からない。
分かっているのは、この雨のお陰で身体がすっかり冷え切ってしまっている事。
もっとも、これに関してはキラが温もりを分けてくれている。
暖かくて、素直に嬉しくて…、愛しい……
それと、周囲から好奇な視線が注がれている。
しかし、これはラクスに何ら不快な気持ちを与えない。
いや、むしろ、ラクスは心の中で誇らしく返す。
『あなた方に、キラのような素敵な男性がいまして?』と。
などと思っていると、不思議とラクスから先程までの不快な気分が消えていった。
どしゃ降りの雨が、まるでシャワーのようにラクスの心を洗い流しているかのように。
やがて、ラクスの心の不快が綺麗さっぱり流された時、雨は止んだ。
「ほら、ラクス」
雨が止むと、キラは足元を指差した。
ラクスはキラの言われるまま足元を見ると、すっかり水溜りに浸かった足元がキラキラと光り輝いている。
どうして? と思い、そのまま光の先を追うようにラクスの視線は空へと向けられると、
「あっ……」
ラクスは言葉を失った。
先程見上げた時は灰色の雲だけだったのが、その隙間から光が差し込み、自分達を照らしている。
いや、それ以上に彼女から言葉を奪ったのは、ゆっくりと空に掛かり始める七色のブリッジ。
『キラはわたくしにこれを……』
晴れ渡り始めてきた空に、はっきりと輝くRAINBOW。
それは、ラクスが今まで見てきた中で一番のRAINBOW。
おそらく今の自分を見ているであろうキラの表情を見たくて、ラクスは視線を下ろす。
すると、何故かキラ以上にキラの後ろの光景がラクスの心を奪う。
『なんて素敵なんでしょう……』
光のきらめきが彩る街並み。
心躍らせているように、とても軽い足取りで歩く人達。
その人達の顔は、全て笑顔。
やがてゆっくりと、ラクスの焦点が本来の場所へ向けられると、そこには恋人の輝くような笑顔。
「ねっ。綺麗でしょ♪」
「ええ…、本当に綺麗ですわ……♪」
ラクスもにっこりと微笑み返し、もう一度しっかり見つめる。
洗い流された心に見つかった、この世で最高のRAINBOWを。
《あとがき》
7月。梅雨も終わり、そろそろ夕立が襲ってくるこの季節。
という事で、夕立上がりの授かり物【RAINBOW】でw
雨に打たれるラクスって正直想像しにくかったんですが、キラが一緒だと自然に見えるのが不思議だなぁ〜w
街中で雨に打たれているのにイチャLOVE全開のキララク。これ萌える風景かとw
まあ…、これがキララクじゃなかったら白い目で睨んでますけどね…(おい)
ちなみに、タイトルの【RAINBOW】は元ネタ有りです。
元ネタは《Home Made 家族》のアルバム【Musication】にある【 R.A.I.N.B.O.W.】という曲。
元ネタの曲を聞きながら、この話を書きましたw
《Home Made 家族》の曲、本当に素敵な曲ばかりで、これを元に色々なキララク話を考えています。
でも《Home Made 家族》の曲は、個人的にはキララクではなくカガリやミリィに合う曲なんだよね。
う〜ん、悩むなぁ〜〜w
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