「ごめん……」


不意にキラはわたくしに謝ってきました。


「どうして謝るのですか?」


「ごめん……」


ですがキラはわたくしに背を向け、ぽつりと呟くだけです。


『キラ……』


わたくしは、今に至る経緯を思い浮かべました。


就寝直前、キラがわたくしの寝室を訪れました。


しかしながらその時のキラの表情は、どうしようもない不安……


もっと簡潔に言えば、出逢った当時のキラがそこにいました。


ほんの少しの衝撃で粉々に砕け散ってしまいかねないほど、脆く繊細で、そして何かに怯えるキラが……


そんなキラは半ば強引にわたくしを自室へと誘いました。


キラは部屋に入るなり、唇を奪い、寝床へ押し倒し、そして……


今はお互い生まれたままの姿で、一枚のシーツに身を包んでいます。


『キラ…、あなたは……』


どうしてキラがこの様な行為に及んだのか。


確証はございませんが、理解できています。


今宵…、今日はキラの誕生日……


ですが同時に、この日はカガリさんの誕生日。


故に、便宜的にこの日が御自分の誕生日となっているのだけだと思っているのでしょう。


そう…、キラは創られた生命……


祝福されてこの世に生を授かった存在ではない……


カガリさんと同じではない…、そう思っているのでしょう……


「キラ、聞こえていますね」


わたくしは背を向けるキラに言いました。


「こちらに振り返ってください」


「………」


返事がありません。


おそらくキラ自身も、行為に及んだ理由を認めたくないのでしょう。


いいえ、それよりもまた、思い違った罪悪感に駆られているのでしょう。


ですから、わたくしはきつい口調でいいました。


「キラ。わたくしを見なさい」


そう言いますと、キラは渋々ながらわたくしの方へと身体を向けました。


ですが一切、視線を合わせようとしません。


「キラ、貴方という人は……」


わたくしはシーツの中へと潜り込み、ぴたっとキラの胸元に耳を当てました。


ところがキラは予想外の行動と思ったのでしょう。


すぐにわたくしを振り払おうとしました。


ですが、わたくしはしっかりとキラを抱きしめ告げました。


「貴方の鼓動…、しっかり聞こえていますわ……」


「………」


キラは暴れるのを止めました。


「誰がどう言いましても、この鼓動はあなたのものなのです」


髪に何かが絡まる感触がしました。


「そして、この鼓動はわたくしのもの……」


わたくしは、しっかりとキラの胸に耳を当て感じます。


とくんとくん……


キラの命の営みを、温もりを、存在を……


「ごめんね…、ごめんね……」


キラのすすり泣く声が聞こえてきました。


キラのお気持ちは理解しています。


ですが、わたくしはあえてきつく言い返しました。


「謝るより、しっかりとわたくしを抱きしめてください」


すぐにキラはわたくしをぎゅっと、強く抱きしめてきました。


痛いほど強く、しっかりと……


わたくしも強くキラを抱きしめ、しっかり聞きます。


穏やかに脈打つ、キラの命を。


『もっと感じてください……』


伝わってくる温もりに、わたくしは心の中でキラに訴えました。














わたくしの鼓動も、貴方のものである事を……

























《あとがき》
キラの誕生日小説。
と言いながら、更新したのは誕生日翌日という大失態……
《すいません…、この日飲んでて終電帰りだったんです…(爆)_| ̄|○》

どうしてもキラの出生の関係上、重い話になってしまいます。
キラがラクスを襲った理由も、自分の誕生日に対するコンプレックスから。という風に書いてみました。

しかしそこはラクス。
しっかりキラを受け止めて、キラの命を祝福しています。
でもって、同時にラクス自身もキラの命であると。

カガリの誕生日小説も考えてみたんですが、どうしてもネタが思いつかなかったです…
去年みたいにカガキラにしようかと思ったんですが、そうするとラクスの出番がないので…

誕生日は、この世界に生まれてこれた自分への祝福を。
そして、生まれ来た全ての生命に祝福を。




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