「桜も…、もう終わりですね……」


ラクスは桜並木を見上げながら、少し寂しげに言った。


「そうだね……」


ボクもラクスにつられるように桜並木を見上げた。


桜の花と青葉がちょうど半分ずつ。


言ってしまえば、桜の季節はもう終わり……


それでもラクスはボクを誘い、ここへと連れてきた。


「キラ……」


ラクスは風に舞う花びらにそっと手をかざした。


「桜も…、これで見納めですね……」


「………」


ボクはわざと答えなかった。


確かに、今日で桜は見納めだ。


でも、それは今年の桜……


「キラ……?」


ラクスはきょとんとした顔でボクを見てきた。


「どうか……、されましたか?」


「ううん。何でもないよ」


「そうです……、きゃぁ」


風が吹き抜けた。


それが桜の枝を揺らし、花びらを容赦なく散らせ、舞い上がらせ、包み込んだ。


ボクを…、ラクスを……


『大丈夫だよ……』


ボクは驚くラクスをそっと抱き寄せ、そっと目を閉じた。


『来年も…、再来年も…、ずっと……』


見に来ます…、ラクスと一緒に……











◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇











突然キラに抱きしめられ、わたくしは一瞬驚きました。


ですが、ほんの一瞬だけです。


『そうですわね……』


わたくしはキラの温もりと桜の香りに包まれながら、そっと瞳を閉じました。


桜はまた来年も咲いてくれるのです。


再来年も、これからもずっと……


『待っていますわ……』


桜はきっと温かく迎えてくれるでしょう。


わたくしとキラを……
















《あとがき》
4月は桜の季節、という事で桜を題材にしました。
もっとも去年も桜を題材に使っていますので、今年は散り桜を。

正直に言いますと、かなりネタ出しに苦しみました…(汗)
スランプと言うべきか、とにかく全てにおいて不調だった4月でございます…

こんな夜流田に、励ましのお言葉を…(おい)
【夜流田さん、励まされると頑張れる子なんで…(爆)】




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