【ご 注 意】




この話はラクスがプラントで議長をしていますが、キラは傍にいません。
キラはオーブのマルキオ邸に戻っています。
《この辺りはオフセット小説の設定です。もとい、そろそろラクス議長時代の話書かないとな》



また、ラクスが物凄く大変な事になっています。
ですので、純真なラクススキーの方はそこを了承した上でお読みください。















『なんていうプレッシャー(重圧感)なんだい……』


ヒルダは戦慄を覚えている。


それも、かつて潜り抜けてきた幾多の戦場でさえ子供の遊び場の様だったと思えるぐらいの凄まじいプレッシャーを……。


しかしヒルダは逃げない…、いや正確に言えば逃げる事が出来ない……


何故なら……


『ラクス様……』


プレッシャーの正体はヒルダの絶対的な主であるラクス・クラインから発せられるものだからである……











あのラクスが、歴戦の猛者であるヒルダを震え上がらせるほど怒っている理由…、それはひどく単純な事……


議長として多忙極まりない日々を送るラクスにも、ようやく長期休暇がとれる目処が立った。


当然ラクスはオーブに戻っているキラの元へ帰る事を心から喜び、着々と休暇に向けての準備を行っていた。


そしていよいよ明日…、この仕事が終わればようやく休暇……


そう思い、今日の職務を執り行っていたその時……


『議長。申し訳ございませんが本日可決される予定の法案の審議が難航している為、少し休暇がずれ込む事になりました』


っと、副議長を務めるイザークの報告があった。


その報告に、ラクスはたおやかな笑みを浮かべて答えたのだが……











『相当、お怒りになられている……』


ヒルダは背中を冷たい汗でびっしょり濡らしながらも、黙々と書類の処理をするラクスの警護を続ける。


だが、職務を遂行するラクスの顔には一切表情が無い。


瞳からも光が一切無い。


ただ黙々と…、やり場の無い怒りを押し殺すためだけに仕事をしている……


『出来れば、このままそっとしておきたいのだが……』


ヒルダの本音を言えば、今にも爆発しそうなラクスに関わりたくない。


正直、キラでも今のラクスを取り扱うのは自殺行為に等しい。


しかしながら、ヒルダはこの危険な不発弾を扱う必要があった。


「ラクス様」


ヒルダは冷静の面持ちを取り繕い、震える喉を懸命に押さえ込みながら告げる。


「そろそろ定例記者会見の時間にございます」


「……、分かりました」


ラクスはヒルダの言葉を聞くと手と止め、おもむろに立ち上がった。











定例記者会見場―――


この場所はラクスが毎週、マスコミを通じて政治状況を民衆へ伝える場所。


より透明性を持った政治と、より民衆に政治状況を伝え、しっかりと民意による政治への監視を促す為に


ラクスが議長就任後、自らの声で定例記者会見を行っている。


もっとも、終戦後からオーブを中心とした地球との関係は極めて良好。


内需はラクスの経済対策が見事に当たり、内需回復は著しい。


さらには山積されている問題の殆どが既に解決策が講じられ、実際に行動に移されている。


その為、この定例記者会見はいわば政策進行度合いの報告の場となっている。


当然、この状況下で記者から民意の怒りに似たような声が上がる事など全く無い。


それどころか、記者達にとってこの会見は一種の癒しの場となっている。


無理もない…、ラクス・クラインは最高評議会議長であると同時に【ザフトの歌姫】と称されるアイドル。


そんな美貌と知性を兼ね備えたラクスの姿を拝見できる記者である事…、もはやプラントでは最高のステータスになっている。


言うまでもなく、記者達に緊張感など微塵も無い。


ところが……


「これより、議長による定例記者会見を執り行う」


ヒルダの声が会見場に響き渡り、ラクスが姿を見せた途端……


ざわざわ……


ざわざわ… ざわざわざわざわ……


いつもなら、ラクスが登場すれば会見場は穏やかな春風の様な雰囲気に包まれる。


ところが今日に限って、それが一切ない。


今日は言うなれば…、真冬の寒空の下に放ち出された様……


この異様な空気に記者達は一同にどよめき始める。


しかしラクスは平然とマイクが置かれてある机の前に立ち、記者達を一瞥すると、


「記者の皆様。申し訳ございませんが、本日はご報告することなど一切ございません」


あからさまに不貞くされた態度で、吐き捨てる様に言い、


「ですので、本日の会見はこれにて終了といたします」


そのまま元来た道を戻ろうとした。


すると……


「クライン議長!」


無謀な…、いや真面目な記者が席を立ち、声を挙げた。


「近々、地球各国と締結される国際平和条約の進行はどうなっていられるのですか?」


その声にラクスは足を止めたが、誰がどう見ても邪魔臭そうな態度で、


「別に……」


そう吐き捨て、また歩こうとしたが、


「別に…、という事はないでしょうか。少なくともオーブ首長国代表とは非公式とは言え何度も……」


「特に何も……」


記者の質問を遮る様にラクスは、また邪魔臭そうに吐き捨て、


「本日の会見は終了と言った筈です。皆様、早々に解散してください」


質問をした記者を、あの光をなくした瞳で一瞥した。


にも関わらず、記者は怯え竦むどころか、このラクスに対して怒声に近い声を上げた。


「議長っ! 本日の議長は完全に他人事の様な、それも全くやる気が見受けられません! その所、どういう所存かお聞かせください!!」


「貴方はそう言いますが……っ!!」


ラクスの鋭く尖った絶対零度の視線が、記者を貫いた。


「わたくしは貴方と違って自分を客観的に見る事が出来るのです! やる気がないと申すならば、わたくしの政策の成果を社に戻ってその曇った目でしっかりの見直しなさい!」


「あ…、ああ…、あわわわわわ……」


ようやく、記者にも戦慄が襲った……


そして、すぐさま激しく膝を震わせぺたりとその場にへたりこんでしまった……


「わたくしは貴方とは違うのです!!」


最後に『全く持って不愉快ですわっ!』と吐き捨て、ラクスは会見場から姿を消した……











その時、オーブ・マルキオ邸では―――


「たたたた…、大変だぁぁぁぁ!!!」


記者会見の一部始終をテレビで見ていたキラは顔面蒼白になってしまい、


「マルキオ様っ!」


すぐさまマルキオ導師に、悲鳴に近い声で訴えた。


「このままじゃオーブと…、いえそれ以前に……っ!」


「皆まで言わなくてもいいです」


マルキオ導師は表情を変えず…、いや頬に見るからに冷たそうな汗を伝わせていた……。


「すぐにプラントへ向かいます。キラ君は姉上に至急連絡を頼みます」


「分かりました!!」











この後、マルキオ導師の介入によって辛うじてプラント・地球間での軋轢が生じる事は免れた。











もっとも事態の収束の為、当初予定されていたラクスの休暇は完全に吹き飛んでしまったが……





























《あとがき》

時事ネタです。思いきり時事ネタです。
それもラクスに、あの無責任総理の辞任会見をやらしてしまいました。サーセンwww

もっともラクスの議長辞任はオフセット小説の方でやってるので、今回はラクスの八つ当たり編みたいな話にしましたw(おい)

ラクスがキレているのは、折角の休みがズレてしまった為。
社会人の皆様なら一度は経験がある筈…
休みが突然吹っ飛び、休みの予定がぶち壊された時のやり場のない怒りを…(汗)
その為、定例会見でラクスが見事なまでに逆ギレやってしまったとい訳で…(爆)

お陰で一気に政治不安が発生しかねない状態になり、マルキオ様が政治介入。
だって…、ラクスを諌める人間ってカリダさんかマルキオ導師しかいないし…w

それでも書いてて思ったのが、あの売国奴爺ぃとラクスが言うのでは、激しく言葉の重みが違う気がしました
やっぱり、器の問題なんでしょうかねぇ〜〜
同じ二世政治家でも幾多の修羅場を潜り抜けて来たラクスと、非国民能無しとでは凄まじい違いだw

ちなみにこの話、もう1つ時事ネタが含まれてます。
もっとも去年(07年)の話ですが…、分かりますよね???
《あれだよ。大女優気取ってた奴のだよ(芸能面でもラクスの方が遥かに格上なので使ってみたw)》







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