《月間キララク08年の設定になっています》
今日はボクと姉さんの誕生日……
皆が気を利かせてくれたのか、今日は姉さんと二人きりでのお出かけ。
お出かけと言っても、姉さんはオーブの代表。
だから、二人で堂々と街中を歩ける訳ではない。
それでも、ボクと姉さんにとって今日は特別な日。
姉さんと二人きりでお出かけするのは、本当に嬉しい。
なんだけど……
「さま…、…いさま……」
ボクの車の助手席に座る姉さんが話しかけてくる。
「お兄さま、お兄さま」
「どうしたの、姉さ…、じゃなかった。カガリ?」
ボクは前方をしっかり見ながらも返事を返すと、
「お兄さまは本当、運転が上手いな」
「はは。ありがとう姉さ…、カガリ」
ボクは少し戸惑いながら返す。
戸惑ったのは姉さんがボクの運転を褒めてくれたことじゃない。
姉さんがボクの事を『お兄さま』と呼んでいることに……
経緯はこうである。
今日、ボクの家に来た姉さんはボクを見るなり、
『お前はいつも本当に世話になっている。だから、今日ぐらいはお前の事を【お兄さま】と呼んでやる』
っと、言ったのだ。
当然、ボクは姉さんの意図など分からない。
だけど姉さんはそれから後、ボクの事を【お兄さま】と呼んでいる。
『確かに……』
ボクと姉さんは双子のきょうだいだ。
どっちが先に産まれたのか、今になっては知る人間もいない。
だから、どっちが年上…、というのか? 兄か姉なのか分からない。
でも、いつからかボクはカガリの事を【姉さん】と呼ぶようになった。
アスランは冷やかしで『お前のほうがしっかりしてるから兄さんだ』なんて言うけど……
ボク自身、【兄さん】って柄じゃない事ぐらい良く分かっている。
それにカガリ自身、ボクの事を兄さんなどと微塵も思っていない。
なのに今日は、ボクの事を【お兄さま】と呼んでいる……
「お兄さま」
姉さんが普段では滅多に聞くことはない汐らしい声で話しかけてきた。
「どうしたの、カガリ?」
ボクはバックミラーを姉さんの顔が見えるように調整しながら返す。
「お前…、今、どういう気分だ……?」
「えっ?」
意味が図りかねたので、ボクはミラー越しに姉さんの顔色を伺う。
茶化しているようには見えない
それどころか、どこか後ろめたい感じがする……
「わたし、時々思うんだ……」
姉さんはか細い声で続けた。
「お前はちゃんとケジメをつけてラクスと結婚したし、イヨも授かった。それに比べてわたしは……」
姉さんはじっと足元を見つめながら呟く。
「アスランとはいつまでも曖昧な関係のままで……。わたしの方からしっかり切り出して…、うわっ!?」
姉さんの身体がシートに沈み込んだ。
ボクが思い切りアクセルを踏み込んだから……
「止めようよ、カガリ」
ボクはミラーを元の位置に戻し、一気に車を加速させた。
「今日はボクとカガリの誕生日なんだよ。そんな日に辛気臭い話なんて聞きたくない」
「ご…、ごめん……」
「それよりも、今日という日を楽しもうよ。今日はボク達にとって特別な日なんだからさ」
「そ……、そうだな♪」
いつもの元気な姉さん姉さんが帰ってきた
「じゃあ、今日はお兄さまの好きな場所に連れて行ってくれ。今日はとことん遊ぶぞ!」
「了解したよ。カガリ」
ボクは姿勢を整えて、さらにアクセルを踏み込む。
姉さんは楽しそうな声を上げて、ボクの運転に身を委ねた。
だけど……
いくらアクセルを踏み込もうと……
いくら鋭いコーナーリングを決めようと……
いくらエンジンの野蛮な咆哮を響かせようと……
いくら姉さんがボクの事を【お兄さま】と呼んでくれても……
ボクの胸にかかる黒いモヤモヤは晴れてくれない……
何故だ……
一体、何故なんだ……
《あとがき》
カガキラの誕生日小説…、なんですが、今年はシリアス傾向で…
当初はコメディにいこうと思ってたのですが、シリアスに。
カガリ(姉)キラ(弟)の夜流田さんにとって、初のきょうだい逆転。
カガリがキラの事を『お兄さま』と呼ばせるのは、物凄く違和感あったのですが、書いている時は妙にしっくりきているのは何故??
ただ、カガリがキラの事を『お兄さま』と呼んだのは、当然ながら含みを持たせる為…
その辺りの含みは、同時にUPしました【jealousy storm】で察していただければと。
でも、こんだけ仲の良い姉弟(兄妹でも)はリアル世界では、まず見かける事はないですね。
ってか、夜流田さんの周りの姉弟(兄妹)は、大抵仲が悪いか、虐げられている(姉弟限定)なんですけどね〜(笑)
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