『それにしても……』


改めて見ると本当、派手なMSだ。


っと……、思えど言えはしない。


何しろこのMS【暁】は、オーブ首長国代表カガリ・ユラ・アスハのもの。


現在の、俺の最高上司のMSだからな。


「どうだ、このMSは?」


などと思っていると、その上司が話しかけてきた。


「OSの調整は後でキラにやってもらえばいい。あいつなら、お前好みのセッティングに組んでくれる筈だ」


「そりゃ、ありがたい」


言っちゃ悪いが、俺は機体の整備は苦手な部類だ。


もっとも、三日あればどんなMSでも手足の様に扱ってきだけどね。


それでも、ちゃんとOSを組んでくれる奴がいるのは本当にありがたい。


しかもやってくれるのが、あの【ヤキンのフリーダム】の坊主だ。


パイロット冥利に尽きるってもんでしょ。


だが、気になる事がある……


「なあ、嬢ちゃん?」


「カガリ…っ、じゃなくて代表と呼べ!」


言った瞬間、怒鳴られた。


失敗失敗♪


こんな嬢ちゃんでも、今は俺の上司だった♪


「悪い、代表。それよりもだ……」


俺は改めて機体を見上げ、呟いた。


「この機体…、あんたの親父さんの形見なんだろ?」


「ああ。お父様が遺してくれたものだ」


「そんな物を、俺なんかに預けていいの? 俺、一応連合のパイロットだったんだぜ?」


「アスランには、もう新しい剣があるからな……」


そう呟いた代表の顔は少し悲しげに見えた。


アスラン……、この坊主は代表の思い人だ。


本来ならその坊主に機体を託したかったんだろう。


しかし、すでに坊主には新しい機体がある。


あのピンクのお姫さまからもらった機体が。


「だが……」


代表はじっと俺を見据えた。


「おまえに【暁】を託せる方が、わたしには大きな意味がある」


「なんだ、そりゃ?」


「知っての通り、これはお父様の形見だ。だから、絶対に返せよ」


「保障…、出来かねるね……」


俺はわざとひねた答えを返した。


確かに嬢ちゃんは、今の俺の上司だ。


だが、それは俺と嬢ちゃんの利害が一致しているだけだ。


悪いが…、終わったらさっさとずらかせて……


「貴様っ!」


いきなり嬢ちゃんは俺の胸倉を掴んだ。


「また艦長を泣かす気かっ!?」


「……んっ?」


なんで、ここであの艦長さんが出てくるんだ?


と思うと同時に、嬢ちゃんは激しく吼えた。


「艦長はずっとおまえの帰りを待っていたんだぞ! それを…、また格好よく散ろうなんて考えやがって!」


「俺はネオ・ロアノークだ。ムウ・ラ・フラガじゃない」


「記憶があろうがなかろうが関係ないんだよ!」


嬢ちゃんの右腕が大きく上がった。


っが、俺はそれを受け止めた。


「止めるな! 殴らせろ!」


「無茶言うなよ。殴られる方の身になれよ」


「うるさいっ! とにかくだっ!」


嬢ちゃんは、鋭い眼光で俺を睨みつけて叫ぶ。


「絶対に生きて帰って来い! それが【暁】を貸す条件だ!」


………


なんだろね……


『生きて帰って来い!』なんて言われたのは初めてだな……


ってか、軍人にいう言葉じゃないでしょ?


だけど……


こういう命令も、悪くないな……


「分かったか! フラ…、ロアノーク一佐!」


俺は嬢ちゃ……、代表から離れ敬礼した。


「ネオ・ロアノーク。代表の命に従う所存にあります」


「分かればいいんだ……」


代表も姿勢を正し、そして大きく頭を下げた。


「アークエンジェルを…、みんなを頼む……」


「了解……」


ダメだな、こりゃ……


ここまでされちゃ、とんずらなんて出来やしない。


代表って言っても、まだ18歳のお嬢ちゃんが……


配下の者…、それも俺みたいな奴にここまでしてくれちゃ……


これでやらなきゃ、男じゃないでしょ?


「あっ、そうだ?」


不意に代表は頭を上げた。


しかし、その顔は代表としてではなく一人の仲間としての顔だ。


「言っておくが、セクハラ行為は厳禁だからな」


「はぁ???」


いきなり何を言い出すんだ、この嬢ちゃんは?


「発覚したら、給料30%カットだからな!」


ちょっと待て!?


なんでセクハラごときで30%もカットされなきゃならない!


「おまえには前科があるからな……」


嬢ちゃんは、何故か苦笑いを浮かべた。


『前科って……』


俺、なんかしたか?


少なくともオーブに入隊してからは、まだする機会にめぐり合っていない。


連合にいた時でも、ちゃんとプライベートで遊んでたし……


どこで、情報流れやがった……?


分からないぜ……



































《あとがき》
45話を妄想

カガリが兄貴(記憶があろうがなかろうが兄貴は兄貴!)に【暁】を託す所を妄想。

カガリにとって一番大事なのは、やっぱり全員が生きて帰ってくることだと思います。
だけど今の流れじゃ、また兄貴が爆散しかねない流れっぽい……
なので、「生きて帰って来い!」という願いを込めていう願いを込めました……

しかしこの兄貴、セクハラやる気まんまんだな〜(汗)
でも管理人はマリューさんにセクハラして欲しい《ってか、しろ!(えっ)》
それをキララクが見て、キラが真似すればさらに良し!(ちょっと待て)
《ま、まあ…、逆はあってもキラがするとは……(おい)》

頼むから、今度こそは生き残れネオ・ロアノーク!
そして、ムウ・ラ・フラガに目覚めるのだ!!


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