ラクスさんがプラントへと旅立って3日
幸い地球軍・ザフトに動きはない。
また一番の心配だったキラ君も、特に変わった様子もない。
穏やかに時間が過ぎている。
「キラ君」
私はフリーダムの整備を終えたばかりのキラ君を呼んだ。
「少し、いいかしら?」
「はい、マリューさん」
キラ君は落ち着いた様子で返事を返してくれた。
2年前のキラ君は、持っている力とは裏腹に少しの衝撃でも崩れ落ちてしまいそうなほど弱い子だった。
でも、今は違う。
ラクスさんと出会い、ラクスさんと同じ時を共有し、愛を育み、本当に立派な青年になった。
もう、あの頃のような弱さはどこにもない。
「ラクスさん、今頃どうしているかしら……」
独り言のように呟いた問いに、キラ君はしっかりとした態度で答えた。
「ラクスなら大丈夫です。バルトフェルドさんもついていますから」
「そうね……」
何故か最近、キラ君を見ているとふいに思いだす事がある。
【エンデュミオンの鷹】と呼ばれ、普段は飄々としていて、子供の心のまま成長したような……、
だけど常に子供達のことを気にかけ、悩んで、苦しんで、それでも懸命に前を見据えて……
そして、私に安らぎを与えてくれたあの人の事を……
「マリューさん、いいですか?」
ふと聞こえてきたキラ君の声で私は現実に引き戻された。
「実はマリューさんに報告していなかった事があるのですが」
「報告? いつの事の?」
「オーブ軍とザフト軍が戦闘した時のことです」
キラ君はとても神妙な面持ちで告げた。
「地球軍の指令艦らしき艦(ふね)に近づいた時…、とても懐かしい感覚を感じました……」
「懐かしい…、感覚?」
「ボクの知っている感覚とは少し違ったのですが、あの感覚は間違いなく……」
キラ君が何を伝えようとしているのか私には分からなかった。
しかし次の言葉を聞いた時、私は言葉を失った。
「ムウさんの…、ものでした……」
「―――っ!?」
「ボクも知っています。ムウさんが……」
キラ君は言葉を止めた。とても辛く、悲しい表情を滲ませて。
そう……
ムウは私達を、アークエンジェルを護る為にローエングリンの盾となり宇宙に散った……。
しかしストライクの残骸は確認できたものの、彼の遺品らしき物は一切発見できなかった。無論、彼の亡骸も……。
直撃だったから…、と思えば全て納得がいく。
でも、私は心のどこかで願っていた。いいえ、今でも願っている。
どこかでムウが生きていると……。
「すみません……」
キラ君は深々と頭を下げた。
「辛い事を…、思いださせてしまいまして……」
「いいえ」
私は謝罪の念に溢れるキラ君の肩にそっと手を置いた。
「とても、いい報告だったわ」
「マリュー…、さん……」
「キラ君が感じたのだから、きっと間違いないわ」
そう……
ムウはキラ君を実の弟のように可愛がり、キラ君もまたムウの事を兄のように慕っていた。
特にキラ君がラクスさんと一緒になってからは色々と面白がって…、もとい面倒を見ていた。
そんなキラ君が彼の存在に気づいたのだ。間違いはない。
それに、あの人は言った。
『必ず、君の元へ帰ってくる』と。
それにあの人は……、
「だって、ムウは……」
私はキラ君に微笑み、誇らしく告げた。
「不可能を可能にする男、だから」
《あとがき》
23話でキラがフラガ兄貴(おいおい)の乗っている船を見て表情を変えたのがずっと気になっていました。
でもって、26話でキラも待ち人となったのでマリューさんとの話が思い浮かびました。
私としては、やっぱりキラとフラガ兄貴は仲のいい兄弟です。
それとマリューさんもキラの保護者、もとい良き理解者でありお姉さんです。
ですから、きっとキラはあの時感じた事をマリューさんに告げたと思います。
私にとってフラマリュはある意味キララク以上のカップルです!
キララクが熟年ほのぼの夫婦なら、フラマリュは新婚ラヴラヴカップル!!(笑)
そんなフラマリュをしっかり見習って欲しいな〜、と思ってます。
《実際、キラが種Dで積極的なのはフラガ兄貴の影響ですYO!!(笑)》
ってかフラガ兄貴! 素顔見せたんだから早くAAに帰ってきてくれ!!(マジで)
帰ってきてキラの手本になるぐらいマリューさんとイチャラヴしてくれ〜〜〜(おいおい)
もどる
SEEDTOP
TOP