「ミリアリア」


カフェのテラスで独りで座る女性、ミリアリアを見つけた。


「あっ、キラ」


ミリアリアもボクに気づき、笑顔で手を振った。


「こっちこっち」


「うん」


先日の一件の後、ミリアリアとは一言も話が出来なかった。


カガリの事もあったがそれ以上に自分も、おそらくミリアリアにもあの時の事が重くのしかかっていたから。


「本当、久しぶりだね」


「この前、会ったばかりじゃない?」


「あっ、そっか」


「キラ、しっかりしなさい」


ミリアリアはにっこり笑ってボクを迎えてくれた。


ミリアリアと一緒にいると、自分でも不思議なくらい落ち着いた気分になれる。


もちろん、ラクスとは違った意味での落ち着いた気分でだ。


「ラクスとうまくやってる?」


「えっ?」


「だから、ラクスと♪」


ミリアリアは屈託のない笑顔で聞いてくる。


本当ならボクも笑顔で答えないといけないんだけど……、


「ラクスは今、プラントに……」


「プラント!? 何で!?」


「手がかりを探す為にバルトフェルドさんと一緒に……」


自然に、と取り繕おうとしたけど出来なかった。


ラクスが出てから今日で1週間。その間、連絡はない。


バルトフェルドさんが一緒だから心配ないとは思うけど……、


やっぱり心配で仕方ない……。


「へぇ〜〜〜」


何故かミリアリアはいたずらっぽく笑った。


「妻の帰りを待つ健気な夫って感じね♪」


「――っ!!」


「まあ仕方ないよね。2年間、ずっと一緒に生活してたんだから」


何も言えない……。


全くもってミリアリアの言うとおりだ。


「っで、帰ってきたら真っ先にラクスを抱きしめちゃったり♪」


「ミ、ミリアリアっ!!」


思わず大きな声をあげてしまったけど、後の言葉が続かない。


ミリアリアの言うとおり、帰ってきたら抱きしめようと思っているから……。


「本当、キラってラクスの事になると面白いわ」


ミリアリアは赤面しているであろうボクの顔をじっくり観察しながらコーヒーカップに口を当てた。











あの戦争からの2年間……


ミリアリアは定期的にマルキオ様の所を、ボクを訪ねて来てくれた。


ラクスの事にも色々と相談に乗ってくれた。


正直ミリアリアがいなかったら、ラクスとうまくやってこれたか自信がない。


だからボクもミリアリアも互いの状況については理解できている。


あっ、違う。


ボクが知らないことが一つだけある。


「ねえ、ミリアリア」


少々聞きづらい事だけど、ストレートに聞いた。


「ディアッカとは会ってるの?」


「えっ……?」


「だからディアッカ。ディアッカとはどうなの?」


ミリアリアは顔色を曇らせ、ポツリと呟いた。


「会ってない…、ううん、会えない……」


「会えないって…、どういう……?」


「全然、連絡が取れないの……」


ミリアリアは大きな溜息をつくと、胸ポケットから一枚の写真を取り出した。


ディアッカとの写真だ。


「色々と手は打ったんだけど、なかなかプラントの情報が入ってこないの。それも軍関係の事だとなおさら……」


ミリアリアはぼんやりと写真を眺めながら続けた。


「でも仕方ないよ……。あいつ、ああ見えても責任感強いし、それにプラントにもう……」


「ミリアリアらしくないね」


ボクの言葉にミリアリアはハッとした顔をしたけど、ボクは思う事をそのままミリアリアに言った。


「ディアッカはそんな人じゃないよ。あんなにメロメロだったディアッカが他の女性に手を出すなんて絶対にありえない」


「メロメロって……」


「本当に好きな女性と出会うと、他の女性なんて目に入らないよ。その証拠に」


ボクは自信たっぷりに言い切った。


「ボクがその際たる例じゃない♪」


「そうね……」


ミリアリアは少し呆気に取られたけど、とても穏やかな笑みを浮かべた。


「ごめん、キラ。少し弱気になっちゃった」


「でもミリアリアは本当に凄いよ。もしも、ボクがミリアリアと同じ立場だったら……」


あっ、しまった……


自分で墓穴掘っちゃった……


「絶対に耐えられないよね♪」


案の定、満面の笑みで返された。


「でも、あたしからすればキラだって十分に立派よ」


「えっ? どういう事?」


「ラクスの事。一緒になってから一途に思い続けて、ラクスの為に立ち上がって、どこまでも信じて……」


ミリアリアはまるで自分の事のように言ってくれた。


けど次の瞬間、ミリアリアの顔がとても険しくなった。


「どっかの誰かさんとは大違いね」


「どっかの…? あっ! う、うん……」


最初誰のことか分からなかったけど、すぐに誰か分かった。


「カガリが可哀想よ! あたしがカガリだったら絶対ぶん殴ってるわ! キラだってそう思うでしょ!?」


「うん…、まったくだよ……」


あの時、正直言って殴ってやりたかった。


でも、カガリが無言でボクを止めた。だから殴らなかった。


「あっ〜〜、もうヤメにしよ」


ミリアリアは不機嫌そうに手を振った。


「せっかくアークエンジェルに戻ろうっていうのに、嫌な気分じゃ台無しよ」


「そうだね」


ボクはミリアリアの言葉の通り、あの時の事を頭の片隅に追いやった。


「みんなもきっと喜ぶよ。ミリアリアがアークエンジェルに戻ってきてくれるの」


「そうね。艦長やノイマンさん、それにマードックさんとも本当に久しぶりだから♪」


ミリアリアは本当に嬉しそうに声を弾ませた。














アークエンジェル帰艦の途中、不意にミリアリアは呟いた。


「ねえキラ……」


「どうしたの、ミリアリア?」


「もしみんなにディアッカの事…、聞かれたら……」


操縦の為、後ろを振り向けない。


でも、聞こえてくる声は少し辛そうな感じだった。


「あたしがフったって事にしておいてくれない……」


「えっ……?」


「そう割り切ってないと、勝手にザフトの情報を調べちゃいそうだから……」


ミリアリアの言いたいことはよく分かる。


もしも勝手に情報を調べて、それが原因で逆にザフトにこちらの居場所を突き止められたら一大事になる。


だからミリアリアは自身に鎖をかけようとしている。


でも、ボクは即答できなかった。


「キラは気にしないで」


ミリアリアは明るく言った。


「あのバカの事だから、きっとひょこっり来るわ」


「ミリアリア……」


「っで、どうせ憎まれ口叩きながらやって来て、あたしの事を散々に言い倒して……」


ミリアリアはひょいとボクの顔を覗き込んだ。


「それであたしが、「うるさいわよ、バカッ!」って怒鳴ってぶん殴って……」


言っていることは過激だ。


でも、ミリアリアの顔は希望に思いを馳せた綺麗な笑顔だった。











「思いきり抱きしめてやるんだから♪」





















《あとがき》
27話のキラ&ミリィを妄想。
夜流田のキラとミリィの関係は戦友であり、何でも話し合える親友だと思います。
話でも少し出ましたが、あの2年間キララクとミリィには交流があります。
ですので、次はラクス&ミリィの話をと考えています。
《その為には、無事にラクスが帰ってきてくれないと…。ラクス、カンバ〜クッ!!(切実)》

作中ではミリィがディアッカをフったと言っていますが、あれは嘘ですよね(嘘であってくれ…)
まあディアッカのことですから一度や二度ぐらいじゃめげませんよ。
たとえ101回ダメでも、ひたすらアタックし続けますって♪
《この例え、分かる人いるかな? ってか、私の歳がバレ…(強制終了)》

ミリィ、本当に逞しくなったな〜〜。
それにAAのCICはやっぱりミリィじゃないとね♪
《でも本当はラクスとのコンビが見たかったなぁ……》

でも、夜流田としましては一日でも早くディアミリが見たいです!
もとい、ミリィの尻に敷かれるヘタレなディアッカが見たい!!(おい)
お願いします、サン○イズ様!!!






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