『怪我の治療をしてくれたのはありたいけど……』


手枷をされた腕を見上げながら、はぁっと溜息を吐いた。


『俺も歳かね……』


先の戦闘、あのMSに全く歯が立たなかった。


【ヤキンのフリーダム】ならば仕方ないか、と思いたいがやっぱり腑に落ちない。


『何で、討たなかった……』


はっきり言って力の差は歴然だ。


瞬殺しようと思えば出来たはずだ。


だが生きている…、いや生かされたと言った方がいいか……


『おそらく、あの坊主がフリーダムのパイロット……』


あの坊主…、どこかで見覚えがある……


ステラを引渡しに来た時のパイロットとそっくり…、いや違うな。


あのパイロットは我欲の塊だ。


自分の我欲を満たす為ならば、平然と妄信に踊らされる奴だ。


だが、フリーダムのパイロットは違う。


あの瞳…、なんて真っ直ぐな瞳をしていたのだろうか……


昔はもっとおどおどと、男らしさの欠片も……


『って、何勝手に思いこんでんだ?』


あの坊主とはさっき初めて顔をあわせた筈だ。


それなのに何故、あの坊主の昔の事を憶測する?


『それでも、まあ……』


上げていた腕を下ろし、さっきの坊主達の会話を思いだした。


『いきなり二階級降格はないでしょ?』


俺を見るなり職人肌のオッサンは「少佐」と言いやがった。


勘弁してくれ……


ただでさえ安月給なのに、二階級も降格したらさらに給料が安くなる。


そりゃ、確かに金使ってる暇なんてないけどさ。


金は大事だよ、ホント……


『……じゃ、なかった』


そんな事よりも、気になったのはあの女の事だ。


もしも今いる場所があのアークエンジェルならば、あの女は間違いなく艦長の筈だ。


アークエンジェルとミネルバ。


この二つの艦は女所帯…、じゃなくて女性が艦長を努めている。これは既存情報だ。


『それにしても……』


艦長と言うから相当固そうな女だと思ってたが、存外悪くない。


いや、もの凄く俺好みの女だ。


少々童顔だがとても可愛い顔だし、スタイルも抜群だ。


足首がきゅっと引き締まっているあたりが、俺好みだ。


『泣かしちゃったよな……』


そう…、ちょっと軽い冗談を言っただけなのに彼女は泣いてしまった。


胸が痛んだ…、ひどく痛んだ……


初めて会った女なのに、罪悪感が襲った……


『でも、笑ったらきっと……』


きっと素敵な笑顔なんだろうな。


今度は笑った笑顔を見てみたいものだ。


それに、何か放っておけないんだよね。ああいう女って……


『さて、これからどうしたもんかね……』


とりあえず、ジブリールの計画はものの見事に大失敗に終わった。


これで奴は失脚、良くて降格だろう。


もっとも、俺の二階級降格なんざ比にならないほどの降格だろうけど


そうなると、必然的に俺の仕事もなくなるって事だ。


死活問題だな、こりゃ……


『いっそうの事、就職活動でもしますか?』


おっ、これは我ながらいいアイデアだな♪


ここに居座らせてくれれば、あの女と一緒にいられる。


見たところ、彼女はフリーだ。


もったいない。非常にもったいない!


だったら、これを機会にお近づきになろうじゃないの♪


『あんな女…、絶対にお目にかかれないぜ……』


それに、彼女は知っている筈だ。


俺が何者なのか…、を……




















《あとがき》
祝! フラガ兄貴、AAに復帰!!
と思ったら記憶がない……(涙)
まあ、あれで普通に「マリュー、久しぶり♪」なんて言ったら、テレビに物投げてましたけどね(汗)

本当、あのマリューさんは切な過ぎますよ……。
ムウさんは生きている。けれど、自分の事は一切覚えていない……。
辛い、辛すぎます……。

でも、最終話できっと記憶がよみがえってハッピーエンドになってくれる筈!
《キララクもそうですが、是非ともフラマリュの復活を!!!》
これからの話、この2人から目が離せません!!


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