「それにしても、まあ……」


ムウは遠目から一人の少女を、ピンクのお姫さまを眺めていた。


名はラクス・クライン。


前プラント評議会代表シーゲル・クラインの娘。


または【ザフトの歌姫】


そして今は、ザフト最新鋭艦【エターナル】の艦長。


「本当、凄い娘だな」


ムウはポツリと言葉を漏らした。


「ええ、ムウさんの言うとおりです……」


ムウの隣に立つ少年、キラ・ヤマトは複雑な顔でムウと同じ場所を見ている。


そんなキラを横目で様子を伺いながら、ムウは飄々と言った。


「男冥利に尽きるだろ? あんな娘に惚れられちゃ」


「えっ!? ぼ、ボクとラクスは……」


「隠しなさんな、少年♪」


ムウは軽くキラの背中を叩いた。


しかし、動揺激しいキラにはそれでも身体にきた衝撃は大きい。


「で、ですから、ゲホッ!」


むせ返るキラとは逆に、ムウの言葉はとても滑らかだ。


「照れるなって♪ 同じ愛しい女を持つ同士なんだからさ♪」


「そ、そんなボクは……」


キラの表情がさらに重苦しくなった。


「ボクはラクスを好きになる資格なんて、ないです……」


「お前にそう言われるとな……」


ムウは大きくため息を吐いた


「俺とマリューはどうなるの? 俺は今まで散々間違えたし、マリューも婚約者を亡くしているんだぞ?」


「えっ! マリューさんに婚約…者……?」


キラの顔から表情が消えた。


マリューに婚約者がいたという話なんて、初耳だったからだ。


「俺も最初は全然だなって思ってたんだよ。実際の話」


ムウはかわらず軽い口調で続けた


「マリューの印象は甘ちゃんだし、危なっかしいし、その癖して変に頑固なところあるしだ。精々いいところって言えば、スタイルぐらいなもん?」


「ムウさん、それはいくらなんでも……」


「仕方ねえだろ。本当なんだから。だけどさ……」


「だけど、なんですか?」


「恋愛って理屈じゃないんだよな。これが……」


ムウの顔に浮かんでいる笑みが心なしか引き締まった。


キラにはそう見えた。


「【JOSU−A】でマリューと離れた時、心のそこから思ったよ。『もう、あんな女とは二度とめぐり会えない』ってさ……。
 っで、上層部がアークエンジェルを生贄にする事を知ったら、もう無我夢中だった。『あの女を死なせちゃダメだ!』って感じでさ……」


ムウはおどけた顔でキラを眺め、ポンポンと頭を叩いた。


「っで、お前もあのお姫様に惚れているよな?」


キラは無言で、わずかに首を縦に振った。


「あの娘の為に戦いたいって、思っているな?」


「は、い……」


「だったら約束しろ」


ムウはキラを自分の傍に引き寄せ、少し照れくさそうに言った。


「絶対にあの娘の所へ帰れ。そして、絶対にあの娘を泣かせるな。俺も絶対にマリューのところに帰ってくるからさ……」


「ムウ…、さん……」


キラは何も言えなかった。


いつもは飄々としているが、冷静で頼もしく、それでいて自分と同じ傷つき、脆い存在。


そして何より奇麗事を、何かのせいには絶対にしない。


キラにとって、ムウはもっとも尊敬する男……


その男の言葉を、絶対に卑下にしてはならない……


「おっと、堅苦しい話はここまでっと」


ムウは大きく背伸びし、軽く首を鳴らした


「そろそろ戻らないとな。あまり遅いと、マリューが心配するしな」


「そうですね。ボクもそろそろ」


「じゃあ、また後でな」


ムウはそう言うと、すっと通路の奥へと消えた。












恋愛は理屈じゃない

理屈じゃないんだ……

いつか、いつの日か……

届け、この思い……













《あとがき》

種時代。フラキラです。

フラガ兄貴がいたからこそ、キラがAAに戻ってきたと思うのです。キラは本当に手がかかる子ですから(笑)
でもって、キララクの二人が見てもフラマリュはベストなカップルと思います。
それに、色々と見習わないといけないですしね。
恥ずかしげもなくイチャイチャとか、フラガ兄貴の押しの強さとか(笑)
種Dのキラの積極性は兄貴の影響。 間 違 い な い!
その勢いで、ぜひともキスシーンを!!(おい)




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