あの戦争で、わたくしは父を失いました……


唯一の肉親を、家族を失いました……


帰る場所を失いました……


ですが今、わたくしには帰る場所があります


とても素敵な場所が……


















――― MY HOME ―――















「ラクスさん、少しいいかしら?」


マーサさんがお帰りになってすぐ、カリダ様がわたくしをお呼びになりました


おそらくは、今後のことのお話でしょう。


ですからキラと一緒にと思い、そのことをお伝えしたのですが、


「二人きりでお話がしたいの」


カリダ様はそう申し、わたくしの手を取りました。














キラ達がいる場所から少し離れた大きな木の下に到着しますと、カリダ様はゆっくり腰を下ろしました


「ラクスさんも座って」


「はい」


わたくしは言われるままにカリダ様の隣に座りました。


しかし、お顔を見ることは出来ませんでした……


迷走を深めるこの世界。そんな世界にわたくし達は再び行かねばならない。


キラと共に、また戦わなければならない……


そのことをお伝えしなければと思うと、どうしてもカリダ様の顔を見ることが出来ませんでした……


わたくしが、どう話を切り出そうか考えていると


「ねえ、ラクスさん」


カリダ様は優しい笑みを浮かべ、そっと話しかけました


「キラと一緒に、行くのですね?」


「はい……」


わたくしは絞るように答えました


わたくしは再びキラを、いえ…、もう既にキラの手を血に染めてしまいました……


きっとカリダ様はわたくしを恨んでいるでしょう


大切な息子を汚したわたくしを、わたくしの存在を……


「そう」


ところが、カリダ様は柔らかな声で続けます


「キラの事、よろしくね」


「えっ……!?」


思いがけない答えに、わたくしはカリダ様の顔を見ました


カリダ様の顔、そこには憎しみも悲しみもありません


あるのはとても柔らかな、清らかな笑顔でした


「止めても、『絶対に行く!』って言うでしょうし」


「………」


「そんな顔しないで」


カリダ様はそっとわたくしの顔に触れました


「キラがまた戦場に行くことは本当に辛いわ。だけど、キラの思いを無視することは私には出来ない……」


「キラの…思い……?」


「キラはあなたと共に歩むことを望んでいるわ。だから、私はキラの思いを尊重したいの」


「カリダ…様……」


「その『カリダ様』は、もうやめましょ?」


そう言うと、カリダ様はわたくしを抱きしめました


まるで実の娘のように優しく、愛しく……


「あなたのお父様のことはキラから聞いたわ。それに、あなたがキラのことで私に負い目を持っている事も知っているわ。でもね……」


カリダ様の声が、直接私の心に語りかけてきます


「私にとって、あなたは大切な子供。キラと同じくらいかけがえのない娘よ……」


「そ、そんな…。わ、わたくしは……」


「だから、全て終わっても帰ってきてね……」


カリダ様はぎゅっとわたくしを抱きしめました


「カリダ…様……」


「だから、それはなしよ」


ありがとうございます……


わたくしのような者を「娘」と呼んでくれて……


家族として迎えてくれて……


再び、帰る場所を与えてくれて……














どれだけ時が過ぎたのでしょうか


気がつけば、わたくしはカリダさんと向き合っていました


「ところでラクス」


カリダさんは少し困った顔をしました


「これから、色々と迷惑かけそうね」


「迷惑…、ですか?」


「キラの事よ」


カリダさんはいたずらっぽく笑い、続けます


「あの子、甘えん坊で泣き虫で、色々と溜め込んだりするくせに、変に頑固なところがあるから……」


「あっ、その事ですか」


カリダさんの言葉に思わず吹きこぼしてしまいました。


「心配ございませんわ。確かにキラは困ったところもありますが、本当に素敵な人ですから」


「そう…かな??」


「わたくし、世界で一番キラのことを愛していますわ♪」


「あらあらまあまあ」














キラ…… わたくしを「歌姫」ではなく、「ラクス」と見てくれた人……


泣き虫で甘えん坊だけど、揺るがない信念を持った人……


必ず、わたくしはキラと一緒に戻ります……


そして、その時は胸を張って言いますわ


「お母さま」と♪


《あとがき》
14話から捏造
な、何を書いているんじゃ私は……(汗)
シリアスで行こうと思ったのに、最後は見事におろのけ……
我ながら、己の文才のなさを嘆くよ……
《ラクス一人称は、マジで難しい。もっと精進せねば……》

作中でもラクスとカリダさんは本当に仲がよく見えました
というより、理想の嫁と姑?(笑)
キラは幸せだな〜。最高の母親に良妻賢母の鏡なんだから(喜)
ああ、パロディ設定でもっとキララク×カリダの話書きてぇ〜〜〜〜!




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