「キラぁぁぁぁぁ!!」


ブリッジに響き渡るラクスの悲鳴。


絶望と恐怖のみに支配された悲鳴……


マリュー達も悲鳴こそ上げなかったが、完全に言葉を失っている。


キラが直撃を受けた……


確かに、キラはインパルスに敗れはした。


しかし、あれは言わば夜道を歩いている時に無言で後ろから刺された様なもの。


条件が五分ならば決してインパルスなどに遅れなど取らない。


そして、対等の条件で勝てる人間などいない。


ラクスも、マリュー達もそう信じて疑っていなかった。


だが現実に今、その確信は打ち砕かれた……


「キラっ!!」


またラクスが悲鳴を上げた。


飛ばされるフリーダムめがけてドムが再び攻撃を仕掛けたのだ。


それも先程と同じ、奇妙な構えから放たれるあの突き。


フリーダムは懸命に体勢を立て直すも、迎撃は不可能。


なりふり構わず、下へと逃げようとするが……


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


三度目のラクスの悲鳴が響くと同時に、ドムがフリーダムの顔面を激しく蹴り上げた。


フリーダムの顔部分は激しく損傷し、さらに飛ばされた……


「あっ…、あぁぁ……!!」


ラクスは蒼白しきった顔でミリアリアの座る通信席へと駆け、ミリアリアを乱暴に席からどかし、通信機を取った。


「キラ、応答してください!」


だが、聞こえてくるのはノイズだけ……


おそらく、二度の衝撃で通信機能が壊れてしまったのだろう……


ならばと、ラクスはすぐさま通信をドムへと切り替えた。


「ヒルダさん! やめてください!!」


ノイズは聞こえてこない、通信機能は壊れていない。


なのに、ヒルダからの返答が返ってこない。


「ヒルダさん! 今すぐ攻撃をとめてください!!」


返信はこない……


「ただちに帰艦してください!!」


「……、せん……」


「ヒルダさん!!」


「その命令は…、受けられません……」


ソノ命令ハ…、受ケラレマセン……


ヒルダは、確かにそう言った。


「ヒルダさん!!」


ラクスの顔がみるみると憤怒に染まった。


ヒルダはラクスと主従の誓いを交わした関係。


ヒルダにとってラクスの命令は絶対。


なのに、ヒルダはラクスの命令を拒んだ……


「もう一度言います…、帰艦してください……」


ラクスは告げた。


柔らかさも、威厳も、感情もない乾ききった声で……


「それは出来ません」


聞こえてくるヒルダの声はとても落ち着いていた。


「この決闘の決着は機体大破か降参のみです。そうならない限り、この決闘は続けます」


「わたくしの…、命令でもですか……?」


「ラクス様と言えども、その命令は受けられません。以上です……」


ブツッと、通信は切れた。


刹那、


「ど……、どうしてなのですかぁぁぁぁぁ!!」


がしゃぁぁんっ!!


ラクスは怒りのまま通信機を床に叩きつけた。


「キラを……、わたくしのキラをっ!!」


ガンッと、ラクスの拳がモニターに叩きつけられた。


しかしコーディネーターと言ってもラクスの筋力は普通の女の子と変わらない為、モニターは壊れなかった。


だが、この一撃でブリッジにいる全員の平常心は粉々に砕け散った。


『か…、艦長……、ど…、どうすれば……』


『無理言わないでよ……。私じゃ止められないわよ……』


アイコンタクトを交わすマリューとミリアリア。


当然の事ながら打開策など思いつく筈もない。


それならばと、マリューとミリアリアは他のクルーに視線を移した。


ところが他のクルーは視線を足元に落とし、怯え、竦んでいる。


歌姫の怒りは男達を完全に震え上がらせている……


っと、その時だった。


「ちょっと邪魔するよ〜♪」


間の抜けた声と一緒にネオがブリッジへと入ってきた。


あまりにも最悪のタイミングでの登場。


だが、ラクスを除く全員が絶好の避雷針の到来に歓喜した。


無論、一同その事は一切顔に出していない……


「ムウ様…、いい所にきてくれました……」


ゆらりと、ラクスはネオへと身体を向けた。


「だから俺は【ムウ】じゃないって」


ネオは飄々とした態度でラクスと対峙した。


「そんな事は問題ではありません……」


ラクスはネオの言葉を無視するように搾り出すように呟いた。


「今すぐアカツキを発進させてキラとヒルダさんを止めてください……」


「………はぁ?」


「止めて…、ください……」


「無茶言うなよ、お姫さん」


ネオは肩をすくめ、言い返した。


「俺はフリーダムの坊主に瞬殺されてるんだぜ? それに、あの姐さんも相当な腕だ。行っても叩き落されるのが関の山だ」


「ならばアスランを連れて行って囮にしてください……」


『おいおい、あの坊主は当て馬か?』


ネオは思わず本心で考えてしまった。


だが、同時に別の事も察した。


『相当テンパってるな…、お姫さん……』


今、ラクスに言葉で伝えても間違いなく伝わらないだろう。


かと言って、沈黙などすれば火に油。


下手に同情などすれば、ユニウスセブン落下と同じ……


『だったら、さっさと爆破させた方がいいな……』


ネオは溜息を一つ吐くと、ラクスを見下すように見た。


「羨ましいな〜、姐さん〜♪」


「っっっっ!!!!」


「アレ、俺がやりたかったのにな〜♪」


ビキッ! とブリッジの空気が凍りついた。


あまりのネオの言葉に、マリューとミリアリアも他のクルー同様に視線を下に移した。


「今…、何とおっしゃいましたか……?」


ラクスは呻くように呟いた。


「空耳…、ですわね……?」


「いいや。お姫さんの耳は正常だぜ」


ネオもラクスの殺気には気づいている。


それでも、ネオは飄々とした態度で続けた。


「坊主も姐さんも、さぞかし楽しいだろうな〜♪」


「たの…、しい……!?」


「そう。あれだけの相手とやり合えるんだ。楽しくないはずがな……っ!?」


ネオが言い終わるや否や、ラクスはネオの胸倉を掴み挙げた。


「ムウ様……」


ラクスの言葉は絶対零度まで達しているが、感情は紅蓮の如く燃え上がっている。


その温度差ゆえか……?


ラクスの全身から陽炎が立ち上がっている……


「マリューさんの手前、我慢していましたが…、もうこれ以上は……」


「だったら俺のアカツキ貸してやるから、止めに行ってきなよ?」


ネオは以前と飄々とした態度を取りづける。


「お姫さんもコーディネーターなんだろ? だったらOSの書き換えぐらい楽勝じゃない?」


「おっしゃる……、通りですわっ!!」


ラクスは感情に流されるまま左腕を振り上げた。


だがネオはそれを難なく防ぎ、逆にラクスの腕を掴み挙げた。


「暴力振るうのはいいけどさ、お姫さん?」


ネオはじっとラクスを見た。


「あの坊主がどうしてた闘っているのか、ちゃんと理解しているのか?」


「原因を知らない貴方が何をっ!?」


「確かに俺はこうなって経緯は知らん。だが、今の坊主が怒りや憎しみで闘っていると本気で思っているのか?」


「え…っ……?」


すっとラクスの顔から怒気が消え、逆に困惑に染まった。


「違う…、のですか……?」


「お姫さんに分かれって言うのが無理な話かもしれないけどな」


ネオもラクスから怒気が消えた事を悟り、そっとラクスの腕を解いた。


「男って奴は何かを賭けて闘わないといけない時がある。今がまさにそれだ」


「賭ける…? 何をですか……?」


「男の尊厳って奴だ」


「男の…、尊厳……」


ラクスは戸惑いながらネオの横顔をじっと見つめた。


ネオの顔は今までの飄々さはなく、戦士としての顔がそこにあった。


それでも、原因を知るラクスは少し言いにくそうに告げた。


「ですが…、キラはアスランと一緒にされた事に……」


「そりゃ、姐さんがわざと坊主を煽ったんだろうな」


ネオは視線を外へと向けた。


「坊主が本当にお姫さんに相応しい男か見極める為にな」


「えっ!?」


「じゃないと、さっきの攻撃の説明がつかない」


ネオはそう言いながら、傷ついたフリーダムを指差した。


「腕の損傷も、顔面の損傷も姐さんは本気でやった。それは分かるな?」


「はい…、ヒルダさんは間違いなく本気でキラを……」


「あれが、姐さんが坊主を認めたって証拠だ」


『ど…、どういう事……?』


ラクスの頭の中は色々な事が錯綜してパニック状態に陥った。


ネオはそんなラクスの疑問を解く鍵を投げ入れた。


「全力の攻撃を仕掛けても坊主なら致命傷を避けると信用した上でやったんだ。ヘボ相手にあんな危ない事は出来やしない」


「ですが、キラはボロボロに……」


「そう見えるのは外見だけだ。よく見ればお姫さんにだって分かる」


ラクスはネオにつられるようにフリーダムをじっと見つめた。


フリーダムの左腕からは火花が飛び散り、頭部も原形を失っている。


しかしフリーダムはサーベルを構え、ドムと向き合っている。


戦意が喪失しているようには到底見えない。


否、それどころかアークエンジェルにいるラクスにも伝わってくる。


『この人を超えたい……』


どこまでも澄み切った闘志が……


「キラ……」


ラクスは改めてキラの知った。


大人しくて繊細で、誰よりも優しい人……


どんな苦難であっても決して逃げない意志の強さを持つ人……


そして、高潔なまでに誉れ高き人……


「ムウ様、ありがとうございます……」


ラクスは深々と頭を下げた。


「もう少しでわたくしはキラを…、キラの誇りを踏みにじるとところでした……」


「気にしなさんな、お姫さん♪」


ネオは外を見つめたまま、僅かに頬を緩めた。


「勝つにしろ負けるにしろ、坊主はまた強くなって帰ってくるぜ」


「いいえ、ムウ様……」


ラクスは軽く微笑み、確固たる自信を持って返した。


「わたくしのキラは、絶対に負けませんわ」








◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆








『この人…、本当に強い……っ!』


ボクは身構えたまま機体の状態をチェックした。


左腕の手首は動くが、腕と肩は全く動かない。


頭部も破壊され、視界の3分の1は飛んでしまっている。


でもその代償というには何だけど、ヒルダさんの仕掛けた攻撃の正体は分かった。


『あれは間違いなく平刺突(ひらづき)……』


それは旧暦の時代、剣客集団の天才軍師によって編み出された技。


突きから瞬時に斬り返しへと移る一撃必殺の剣術……


でも、それを使うには相当の腕が、


しかもMSで実践する為には、常人を遥かに越える操縦と判断力がいる。


それを、ヒルダさんは平然とやってのけた……


『でも…、MSだったのが救い……』


人間ならば体が動く限り連発が可能だろう。


しかし、これはボクの憶測だが、あの技はブーストに相当の負荷をかけるようだ。


その証拠に、ヒルダさんは大きく距離を置いて攻撃を仕掛けてこない。


きっと限界寸前のブーストを休ませているに違いない。


『今、こっちから攻めるか? でもそれじゃ……』


確かに今攻めれば勝機はある。


だけど、それで本当に勝ったと言えるのか?


ヒルダさんは持てる全ての力でボクと戦ってくれている。


それに、本当にボクが憎いならばダメージを入れたときに間髪いれずに攻めてきた筈。


ブーストが使えなくても、あの状態ならば接近戦で十分に仕留められたのに……


でも、ヒルダさんはそれをしてこなかった。


ヒルダさんは最高の一撃でボクを倒したがっている……


ならば……


『ボクも…、それにお応えします……っ!』


ボクはビームサーベルを収め、背中に背負ってきた対艦用のサーベル取った。


それを左手で持ち、柄にそっと右手を添えた。


『これが、ボクの切り札です!!』











『ホント凄いよ…、坊や……』


ヒルダはキラの強さに対し、素直に感心した。


一撃目は狙い通りにフリーダムにダメージを与える事ができた。


しかし二撃目……


フリーダムは下へと避け、反撃に移ろうとした。


普通、下に避ける選択肢など無い。


しかも、あの突きでは下への反応は出来ない。


同時にあれは地面がない宇宙、ならばこその回避であり反撃への唯一の方法。


言わば、あの蹴りはラッキーパンチ。


たまたま運良く当ったに過ぎない。


『でも…、何で攻撃を仕掛けて来ないんだい……?』


キラがこちらのアキレス腱…、ブーストの限界に気づいていると分かっている筈。


しかしキラは対艦用のサーベルを取り出し、奇妙な構えを取っている。


「もう一度、あの突きを出して来い!」と言わんばかりに……


『待っててくれてるのかい……』


ヒルダは心の中で笑った。


しかし、それは戦場では許されぬ甘さへの嘲笑ではない。


キラ・ヤマトと言う戦士の矜持に対してへの賛辞の笑み……


『坊や…、あんた最高さね……っ!』


ブーストは十分に休まった。


ヒルダはフリーダムを見下ろす位置へとポディションを移した。


そして、三度あの構え……


いや、今度はサーベルを頭上で構えた。


『これが正真正銘の刺突(つき)……』


上から打ち下ろせば左右は無論、上下への対応も出来る。


逃げ場はどこにもない……


『後は呼吸だけ……』


ヒルダはゆっくり深呼吸し、機を窺った。


キラが動き出す、その瞬間を……











『やっぱりそう来ますね……』


ヒルダさんは上のポディションを取り、サーベルを頭上で構えた。


間違いなく、あれが正真正銘の平刺突……


横に避けてもなぎ払い、上に避ければ斬り上げ、そして下に避ければ打ち下ろしの斬撃……


死角はどこにもない……


『こっちから動くか…、いや……』


今動けば確実に間合いを奪われる。


ここで動いたら負ける……


ボクは呼吸を整え、ヒルダさんが動くのを待った。


でも、ヒルダさんは動く気配すら見せない。


明らかに、ボクが焦れて動くのを待っている……


ここは我慢比べだ……っ!











『やっぱり動いてこないね……』


ヒルダは少し汗ばんだ手を操縦桿から離し、軽く汗を拭った。


先に動けば圧倒的不利、キラはそれを理解している。


『でも、何を企んでいるんだい……?』


ヒルダはキラの狙いを図りかねていた。


キラの狙いは明らかにカウンター。


ところがフリーダムの武器はビームサーベルではなく対艦用のサーベル。


カウンターならば攻撃の速さが肝になる。


それなのに、フリーダムは明らかに大振りになり重量もある対艦用サーベルを装備している。


しかも、それを鞘に収めたままの状態で……


『ヤケになった…? いいや坊やがそんな真似するはずがない……』


分からない……


ならばと、ヒルダは少しだけ間合いを詰めた。


しかし、フリーダムは微動だにしない。


それならばと、さらに間合いを詰めた。


それでも、フリーダムは動く気配すら見せない。


『坊や…、あんた何を……』


装甲越しから伝わってくるキラの気配。


最初の様な紅蓮の如く殺気でも、気高き闘志でもない。


言うならば清流の様な穏やかさ……


『行くか…、行くべきなのか……』


あと一歩踏み込めば、ヒルダの突き技の間合いになる。


しかし、その一歩が踏み出せない。


踏み出すことが出来ない……


『もう一度距離をとろう……』


ヒルダが動こうと思ったその時だった。


フリーダムの右手が柄からほんの少しだけ離れた。


『焦れたね……、坊やっ!!』


千載一遇の時!


ヒルダは一歩踏み込むや否や、ブーストを一気に全開させた。


一瞬にしてMAXスピードに乗るドム。


構えたサーベルを一気に打ち下ろそうとしたその時、


『な、なんだい!?』


ドムの頭上を銀色の流線が駆け抜けた。


しかし衝撃も無ければ、フリーダムも構えたまま動こうとしない。


その間にもフリーダムとの距離がつまり、腕も振り下ろされていく。


「坊や! 攻撃はっ!?」


ヒルダは叫んだが、フリーダムは動かない。


攻撃どころか回避すらする気配がない。


「坊や! あんた死ぬ気かいっ!!」


ダメだ!


このまま行けば、確実にサーベルはフリーダムのコックピットを貫く!


ヒルダは懸命にドムを止めようとするが、もはや勢いは止まらない!


止める事が出来ない!!


『あたいが……』


その瞬間、ヒルダに流れる時間が急激に遅くなった。


あたいが坊やをけしかけたばっかりに……


あたいが本気で仕留めにいったばっかりに……


あたいが素直に坊やを認めなかったばっかりに……


あたいが……


あたいが…、ラクス様の全てを殺す……


「坊やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


サーベルがフリーダムのコックピットめがけて打ち下ろされた……


打ち下ろしてしまった……


打ち下ろして……


打ちおろ……


「えっ……」


フリーダムを貫いた感触が伝わってこない……


ヒルダは非情なる現実から逃げるかのように閉じてしまっていた目を開けた。


瞬間……


「なぁ……、何だって!?」


ヒルダは目を疑った。


そこにはフリーダムがボロボロになりながらも悠然と立っている。


それは喜ばしい事…、それは本心……


だが、それ以上の衝撃がヒルダの目の前にあった。


「う……、腕がないっ!!!」


ドムの両腕の肘より先が無くなっている!


いや、綺麗に斬られている!


そんな衝撃など一切無かった筈なのに!


腕が斬られている!!


「な、何がどうなっていやがぁ……、うわぁっ!」


フリーダムは最後まで避ける事をせず、そのまま正面から衝突してしまった。


凄まじい衝撃がヒルダを襲った。


しかし、フリーダムはしっかりドムを抱きとめている……


お陰で衝突以上の衝撃は襲ってこなかった。


『坊や…、あんたって奴は……』


ヒルダは思い知った。


穏やかな容姿の内に秘めた絶対的強さと、確固たる信念を……


キラ・ヤマトの尊厳を……


ラクス・クラインの心を守護するに相応しい男であると……


「坊や、聞こえるか?」


ヒルダはフリーダムに回線を繋ぎ、晴れやかな気分で告げた。


「あたいの……、負けさね♪」








◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆








『それにしても……』


ネオは格納庫に戻ってきたドムを見ると感心を越えて半ば呆れてしまった。


「何て斬られ方なんだ、こりゃ……」


ネオは斬られたドムの腕を見て、思わず呟いてしまった。


斬られたドムの両腕。


装甲部分は無論、電気回路や稼動部分においてまで全く乱れることなく綺麗に斬られている。


あの対艦用のサーベルでだ……


「あれは斬るってより叩き潰す物だろ……?」


確かに対艦用のサーベルにも刃は付いている。


しかし、元々は戦艦クラスの大きさのものを破壊する為のサーベル。


そんな物で斬れば、普通断面はぐしゃぐしゃになってしまう。


なのに、この斬られた方はとても綺麗……


言うならば、日本刀(サムライソード)で斬られたのと同じ……


『やっぱりタネは、坊主が繰り出したあの斬撃……』


ネオはフリーダムの背中に装備されているソードへと視線を移した。


『あの時、坊主は……』


キラはヒルダが自分の射程圏に入るのと同時に剣を抜いていた。


斬撃は銀の光となり、ドムの両腕を斬り捨てた。


そして、剣を鞘に収めた。


だが、全ての動作は一瞬!


おそらく、ヒルダには何も見えなかった筈。


あの時、傍観者のネオには見えていた。


いや、辛うじて視認する事が出来た……


刹那と言うに相応しい間に、キラは雌雄を決していたのだ……


『光速…、いや神速と言うべきかな……』


あのような攻撃、ネオにもヒルダにも、いや誰にも出来などしない。


あれはキラだけが出来る神の斬撃……


キラのみ踏み入る事が出来る世界……


「羨ましいぜ、本当……」


ネオは心底思う。


あれほどの戦いをすれば、絶対に見えない世界が見えただろう。


あれだけの意地をぶつけ合えば、きっと楽しかっただろう。


あれだけの相手ならば、きっと自分の中にある……


「だけどな〜」


ネオは誤魔化すように視線を移した。


その視線の先には……


「ヒルダさん! キラっ!!」


カンカンに怒ったラクスが格納庫中に響き渡るほどの声を上げていた。


「あなた達は何を考えているのですかっ!!」


『お姫さん、怖っ……』


ネオは肩を竦めながら傍観者を決め込んだ。


そう……


ラクスはヒルダとキラが戻るや、すぐさま二人を呼びつけそのまま説教に入ったのだ。


しかも、ヒルダとキラはしゅんとしょげている。


まるで雨に打たれている子犬だ……


とても、あの死闘を繰り広げた相手には見えない……


『躾(しつけ)が厳しいお姫さんなこった……』


ネオはたまらず複雑な笑みを浮かべ、くるりと背を向けた。


『一番強いのは、あのお姫さんだな……』


とりあえず気分なおしに艦長室にでも行くか。


っと思い、足を進めようとした時、ネオの頭にふと何かがよぎった。


『俺…、なんか忘れてるような……?』


なんだっただろう?


何か忘れているような気がするんだが??


はて???


『思い出せねぇなら、特に問題ないか♪』


ネオは気を取り直し、艦長室へと向かった。














《翌日、アークエンジェルの清掃ロッカーでアスラン・ザラが発見されたとか……》











《後書きという名の言い訳》

更新遅れて大変申し訳ございませんでした!!(土下座)

更新が遅れてしまったのは、体調を崩したからとか、
ライ○ドアショックで株で大損して追い証発生したからとかではないんです…(時事ネタやね)
単に管理人の文才の無さが招いた結果なのです…_| ̄|○

もう〜、ネタがいい感じにボコボコ出てきて調子こいて、気がついたら大変な事に!
広げまくった風呂敷を畳むのに必死でした…
《話を書くときはちゃんと計画的に書きましょう〜(爆)》

それに、ちゃんと描写が分かってもらえたかもの凄く不安です…(ドキドキ)
ちゃんと、某明治剣客漫画を読み込んで勉強してはみてたのですが…(えっ)
《ヒルダ姐さんとキラの技の元ネタ、分かりますよね??(不安一杯)》

オレが書くラクスってもの凄く攻撃的な気がするな…
平気で物に当たるし、兄貴に食って掛かるし…
でも、個人的にはこういうラクスも好きです(笑)

あとネオ(フラガ兄貴)もたくさん書けて満足です♪
凸は…、都合によりカットしました!(無理! そこまでまとめられなかった!)

この話を書いているときに、新たなキラ&ヒルダ姐さんの話が浮かびました♪
キラ&ヒルダ これは非常に楽しい組み合わせです♪

「キラ&ヒルダを書いて!」とせがんだ大勢の皆様、本当に感謝!(ペコリ)




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