「こりゃぁ〜面白そうだな〜♪」
ここは展望室。
ネオは展望室から見える光景に喜々とした表情を見せた。
「何が面白い事ですか!?」
対し、ネオの隣に立つアスランは露骨に顔をしかめた。
「こんな時に……。キラは何を考えているんだ!」
「随分と頭固いな〜、坊主?」
ネオはアスランを茶化すように続けた。
「こんな闘い、もう二度とお目にかかれないんだぜ?」
「フラ…、ロアノーク一佐!」
「ってか俺自身、凄く興味があるんだよな。これ……」
飄々としたネオの顔に真面目さが混じり始めた。
「【ヤキンのフリーダム】と【漆黒の豹】。お前はどう見る?」
「どう見るって!」
アスランは憤慨した様子で返した。
「キラに勝てるのは俺だけです!」
「あん……?」
アスランの答えに、ネオも露骨に顔をしかめた。
「な〜にのぼせ上がってんだ、坊主……?」
「のぼせ上がってなんかいません!」
「確かにインパルスのガキには負けたけど、あの坊主は俺を瞬殺したんだぜ?」
ネオは険しい表情のまま外へと視線を向けた。
「俺の見立てじゃ、あの坊主の方がお前より数段格上だ。てか、少なくとも俺でもお前に勝てる自信はあるぜ?」
「な……っ!?」
「そして、あの姐(あね)さんの腕も…、俺と互角だ……」
『俺がキラよりも、一佐よりも弱いだとっ!』
っと、アスランは叫ぼうとしたが出来なかった。
周囲を包んでいる張り詰めた空気がそれを許さない……
「さ〜てと……」
ネオはアスランの事など忘れたかのように外の光景に魅入った。
「見せてもらおうか? フリーダムの本当の強さを…、ね……」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
コックピットから見える漆黒の機体。
キラは【ドムトルーパー】の情報はデータでしか知らない。
重火器の性能を加味すれば、絶対にボクのフリーダムのほうが強い。
でも機動性はフリーダムより若干劣る程度。
今回はサーベルのみでの戦い……
機体のハンデ差なんて無いに等しい……
『だからこそ……』
キラは操縦桿にそっと手を添えた。
『この闘い…、絶対に負けられない……っ!!』
『しっかし詐欺だね……』
あの坊や…、女の子みたいな顔してるのに……
なんだい、この異常なほどの重圧感(プレッシャー)は!?
迂闊に踏み込んだら、瞬殺されちまうよ……
『それにしても……』
ヒルダは正面に見えるフリーダムを睨むように見た。
両手にビームサーベル。
あの歳で二刀流ってのが痺れるね〜。
でも、それ以上に気になるのが背中にしょってるソード。
ありゃ対艦用ソードじゃないかい?
しかも、ご丁寧に鞘にまで入れて……
『まあ、でも……』
ウダウダ考えても埒があかないよ……
何しろ、これはあたいの方から売った喧嘩。
負ける訳にはいかないさね!
「いくよ、坊やっ!!」
ヒルダはビームサーベルを抜き放ち、ブースト圧を上げた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「始まった!!」
ネオが声をあげるのと同時に、ドムがサーベルを振りかざし一気にフリーダムへと突っ込んだ。
対し、フリーダムは構えたまま動かない。
『坊主は見(けん)…、いや!?』
片方で初太刀を捌き、二ノ太刀で仕留める…、カウンター狙い!?
ネオが思うと同時にドムのサーベルが振り下ろされた。
フリーダムはそれを左のサーベルで受け止め、と同時に右腕が攻撃態勢に入る。
だが、その前にドムの左足が振りあがり、フリーダムの胴体部へと襲い掛かる。
『姐さん、読んでいやがったな!』
至近距離からの蹴り、これではサーベルを使っての捌きは不可能。
直撃は間違いない…、そして体勢が崩れた所で二ノ太刀……
ところがフリーダムは瞬時に防御へと回り、右腕で蹴りを防ぐ。
体勢は崩れない!
逆にドムの右脇腹ががら空きになっている。
フリーダムはその隙を見逃さずに、ドム同様に左足で蹴りにいく!
しかし、ドムはフリーダムの脚が動くのと同時に大きく後ろへと後退。
フリーダムの蹴りは空を斬る……
「坊主も姐さんもやるねぇ……」
ネオは感心よりも驚愕した。
あのスピード、あのキレ、あの判断力……
あれはパイロットの腕があってこそ出来る芸当。
機体云々ではない……
「おい坊主、これでもまだ自分より……?」
アスランを嘲る様に言ったネオの言葉は無意識に止まった。
隣にいるアスランの顔…、それは完全に戦士の顔になっていた……
『ほう〜、あながち増長って訳じゃないってか?』
ネオは表情を引き締め、今度は真面目にアスランに聞いた。
「坊主はこの状況、どう見る?」
「白兵戦では互角ですね……」
「っで、この先の展開は?」
「長期戦は間違いないでしょう……。この勝負、先に根をあげた方が負けです……」
「なるほどね……」
ネオは口でこそ同調したが、本心は……
『この坊主…、今まで格下の奴等としか戦ってねぇな……』
ネオは毒つき、アスランから視線を外した。
『長期戦? そんな訳ねぇだろ!』
ネオは最初の接触で両機の決定的機体性能差を見極めていた。
フリーダムは蹴りを右腕でガードし、なおかつ姿勢を崩さなかった。
対し、ドムは避けた。
少々体勢に無理があったかもしれないが、あれだけの腕のパイロットならば十分に防げた。
しかし、ドムは防がずに避けた。
この事実が示す事は…、機体のパワーと耐久性……
おそらくドムのパイロットは、フリーダムの蹴りは防げないと判断した。
もしも防ごうものならガードした腕を持っていかれる……
いや、そうでないにしろ重度のダメージを負うと見たに違いない。
機動力に遜色は無くてもパワーと耐久性が全然違う。
長期戦になれば100%ドムは負ける。
ドムが勝つためには短期決戦しかない。
次の攻撃で勝負の趨勢が決まると言っていい……
『さあ姐さん…、どう攻める……っ!?』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『ったく、洒落にならないねぇ!』
ヒルダは激しく毒づいた。
初太刀を囮にして格闘で体勢を崩し、そこを突く。
目論見どおり、隙はできた。
なのにフリーダムは危険と見るや瞬時に防御へと回った。
それどころか完璧に攻撃を受けきり、カウンター。
それでも、あのタイミングならば十分に防げた。
しかし防ごうとした瞬間、ヒルダに電流が走った。
【防ぐな! 避けろっ!】と……
理屈ではない、本能がそう告げた。
『長期戦に持ち込めばって思ってたけど……』
ヒルダは冷静に状況を分析する。
あれだけの捌き、あれだけの機体。
そして、あれほどまでのパイロット……
長期戦になれば、先に根を挙げるのは間違いなく自分。
いや、自分が根を上げなくても機体が悲鳴を上げる。
勝つには短期決戦しかない……
『出来ることなら、使いたくなかったけどね……』
ヒルダは大きく息をつき、覚悟を決めた。
だが、敗北の覚悟ではない……
「聞こえるかい、坊や!」
ヒルダはフリーダムに回線を繋ぎ、怒鳴った。
「手ぇ抜いってと……、死ぬよっ!!」
そう、覚悟とは……
最悪、ラクスの全てを殺めてしまう事……
『手加減なんて…、していません……っ!』
突然聞こえてきたヒルダの声に、キラはぎりっと歯を鳴らした。
この人…、とてつもなく強い……!
ヤキン・ドゥーエのあのガンダムと互角……
キラは前方で構えを取るドムを睨みつけた。
不思議な構えだ……
右腕を引き気味にしながらサーベルを前に突き出し、左手はサーベルに添えられている。
おそらく突進系の突き技。
その一撃で勝負を決するつもりか?
『その勝負……、受けて立ちます!』
キラは両方のサーベルを順手から逆手へと持ち替えた。
片方で突きを捌き、同時にもう片方で斬り捨てる。
最初の接触でドムのスピードは掴んでいる。
次は…、絶対に仕留める!
『でも何だろう、この感覚……?』
極限までの緊張感の中に、キラは感じていた。
全身は火照る様に熱いのに、頭の中は涼風が吹いているような感覚を……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『何を考えてやがる、姐さん!?』
ネオはヒルダの構えにある種の絶望感を感じた。
確かに、フリーダムを仕留める為には短期決戦しかない。
だが、玉砕覚悟の攻撃が通じるような相手ではない!
なのに、ここにいても感じてくるこの感覚……
確信めいたその自信は何なんだ!?
『他に切り札があるのか、姐さ……っ!?』
その時、ドムが動いた!
『えっ!?』
キラは我を疑った。
突撃してくるドムのスピード……
それが先程と全然違う!
『しまった! 間合いがぁ!!』
一瞬にして間合いがドムに支配された。
捌きでは……、間に合わない!!
『それでも避ける事ぐらいはぁ!!』
キラは即座に作戦を変更した。
紙一重で避け、交差した所を討つ!
と思っている間に、ドムのビームサーベルがフリーダムへと突きつけられる。
キラはほんの僅か、機体を右へと動かした。
サーベルが通過すれば、決定的チャンスが訪れる。
そこで決着……
キラはそう確信し……
「甘いよ…、坊や……」
ヒルダの声が聞こえたのと同時に、突然サーベルの軌道が変わった。
軌道の先は…、フリーダム……っ!
「しまった! 間にあ…っ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
キラに、フリーダムに凄まじい衝撃が襲い掛かった。
ドムのサーベルが……
フリーダムを捕らえた!!!
《途中経過という名の言い訳》
キラ、敗れる!?
すいません、まだ決着はついていません。
本来ならば【決闘編】で終わらせるつもりが、書いているうちにさらにネタが膨らんでしまいました!
しかし、文才の欠片も無い管理人がよくもこんな話を書いているな…(汗)
ちゃんと状況とか描写が伝わっているかがもの凄く不安です…
《お願いだ…、誰かオレに文才をくれ……_| ̄|○》
「こんな表現じゃ分からねぇよ!」等のツッコミがございましたら、どうぞ遠慮なく言ってください!
無い文才なりに必死こいて頑張りますので!!(爆)
第三者の視点で兄貴と凸が登場!
でも、記憶が戻る前なので兄貴は『ネオ』のままでいきました。
《でも何度も『ムウ』って書いてしまうんだよな〜(笑)》
的確に状況を見抜く兄貴に対し、ホント全然見えてねぇな凸は…
凸の見解なんてE川の解説よりもひでぇよ♪(おい)
蛇足ですが、兄貴の口調は某走り屋チームのリーダー風に読む事をお勧めします(笑)
《子安ボイスの本領は、やっぱりあっちかと♪(分からない人はごめんなさい)》
キラは一体どうなったのか!?
そして、この闘いの決着は!?
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